通信制高校を選ぶとき、保護者から出てくる不安のひとつが「そこから大学に行けるのか」です。結論から言えば、進めます。通信制高校を卒業すれば全日制と同じ高校卒業の資格が得られ、大学の受験資格もそのまま得られるからです。
ただし、学校によって受験に向けた支援の形はまったく違います。予備校が系列にある学校、大学進学専用のコースを持つ学校、指定校推薦の枠を持つ学校、そもそも進学支援を前提にしていない学校があります。この記事では、当サイトで募集要項や公式サイトを確認した35校の情報をもとに、その違いを4つの型に整理します。
この記事の要点
- 通信制高校の卒業資格は全日制と同じ。大学受験資格に差はない
- 学校の進学支援は「系列予備校型」「専用コース型」「推薦枠型」「支援なし型」の4つに分かれる
- 指定校推薦や学校推薦型選抜を狙うなら、評定平均が要る。1年目からレポートと試験に手を抜けない
- 高校に在籍せず高卒認定から受験する道、通学しない通信制大学という選択肢もある
まず制度を確認する
通信制高校は学校教育法に基づく高等学校です。レポート・スクーリング・試験によって74単位以上を修得し、3年以上の在籍と特別活動への参加という条件を満たせば卒業となり、得られるのは全日制と同じ高校卒業の資格です。大学の出願資格は「高等学校を卒業した者」なので、課程による区別はありません。
大学の選抜方式は主に3つあります。学力試験で決まる一般選抜、高校からの推薦が要る学校推薦型選抜(指定校推薦・公募推薦)、志望理由書や面接などで選ぶ総合型選抜です。このうち学校推薦型選抜だけは、在籍する高校が推薦してくれるかどうかに左右されます。通信制高校を選ぶときに進学の話が絡んでくるのは、主にこの部分です。
学校の進学支援は4つの型に分かれる
当サイトで確認した35校を、大学進学の支援という観点で整理すると次の4つになります。
| 型 | 仕組み | 当サイトで確認した例 |
|---|---|---|
| 系列予備校型 | 同じ法人や提携先の予備校・塾を優待や割引で使える | わせがく高等学校(早稲田予備校優待制度)、精華学園高等学校(医学部予備校Avyrexと提携)、トライ式高等学院(学院内で受験対策) |
| 専用コース型 | 大学進学に特化したコースを校内に置いている | 第一学院高等学校(プレミアムコース大学進学専攻)、ヒューマンキャンパス高等学校(AI大学進学専攻)、勇志国際高等学校(オンライン大学進学コース、勇志ネット予備校クラス)、精華学園高等学校(個別大学進学プラン)、天王寺学館高等学校(通学部5日制・3日制特進コース)、滋慶学園高等学校(特別進学コース) |
| 推薦枠型 | 付属校の推薦枠や指定校推薦枠を持っている | 東海大学付属望星高等学校(東海大学への推薦入学ルート)、屋久島おおぞら高等学校(指定校推薦枠あり) |
| 支援なし型 | 進学支援を前面に出していない。塾や独学で対応する | 自宅学習中心のコースを持つ多くの学校 |
この分類が役に立つのは、支援の形によってかかる費用の性質が変わるからです。系列予備校型は学費とは別に予備校の費用がかかりますが、優待で安くなることがあります。専用コース型は学費そのものが上がります。推薦枠型は費用が増えるわけではありませんが、その大学に行きたいかどうかに縛られます。
費用の考え方が変わる
トライ式高等学院は「当学院では大学受験対策も行えるため塾に通う必要がなく、塾代がかかりません。一方、他の通信制高校で大学進学を目指す場合には塾に通うケースが多く、結果として総費用は当学院より高くなる場合も多くあります」と説明しています。学費だけを比べると高く見える学校でも、塾代を含めた総額では逆転することがある、という主張です。
この主張は一理ありますが、鵜呑みにはしないでください。確認すべきは、その学校の受験対策で自分の志望校に届くのかという点です。校内対策の水準は学校によって差があり、難関大を目指すなら結局は外部の予備校を併用することになる場合もあります。説明会では「対策の内容」ではなく「直近の合格実績と、その生徒がどのコースにいたか」を聞くと実態が見えます。
公表されている進学実績は限られている
当サイトの学校別記事50本を読み直したところ、進路実績を割合や人数の数字で確認できたのは26本でした。ほかに、大学名や就職先名を挙げるにとどまる学校が20本あり、母数となる卒業者数が示されていない例も多く見られます。数字が出ている学校でも、分母の取り方は学校ごとに違います。50本を対象に集計した結果は通信制高校の進学実績、進学率を具体的な数値で公表しているのは何校?にまとめました。
数値や実績に言及していた例としては、NHK学園高等学校が大阪教育大学・近畿大学・関西大学などの合格実績を紹介しており、わせがく高等学校は早稲田予備校の優待制度とあわせて難関大学にも毎年多数の合格者を輩出しているとしています。トライ式高等学院は特進科の大学進学率を公表しています。
合格実績を見るときは、母数と対象コースを必ず確認してください。「東京大学合格」と大きく書かれていても、それが全日制に近い週5日通学の特進コースの生徒1名であれば、自宅学習中心のコースを選ぶ人にとっては参考になりません。説明会で聞くべきは「そのコースからの進学状況」です。
推薦を狙うなら1年目の成績が効く
学校推薦型選抜、とくに指定校推薦には評定平均の基準があるのが一般的です。通信制高校でも評定はつきます。レポートの内容と単位認定試験の成績で決まる仕組みなので、「単位が取れればいい」という進め方をしていると、3年目に推薦の条件を満たせないことになります。
指定校推薦の枠があるかどうかは学校によります。屋久島おおぞら高等学校は公式サイトに「指定校推薦枠もあるので、先輩たちも続々大学へ進んでいます」と記載しています。ただし、どの大学に何枠あるかは公開されていないことがほとんどです。進学を重視するなら、入学前の個別相談で次の3点を聞いてください。
- 指定校推薦の枠があるか。ある場合、どの分野の大学か
- 推薦の校内選考で使われる評定平均の算出方法
- 自分が選ぶコースの生徒が、その枠を使えるのか
3つ目が意外に重要です。通学コースの生徒に限定されている場合があります。
高校に在籍しないルートもある
大学受験資格を得る方法は、高校の卒業だけではありません。高等学校卒業程度認定試験(高卒認定)に合格すれば、大学の受験資格が得られます。文部科学省が年2回実施しており、合格した科目ごとに認定されるため、一度で全科目に合格する必要はありません。
ただし、高卒認定は学歴にはなりません。最終学歴は中学卒業のままです。大学に進学して卒業すれば最終学歴は大学卒業になるので、進学を前提にするなら実務上の不利は小さくなりますが、途中で進学をやめた場合は中学卒業として扱われます。この違いは不登校の子が高校に進むときの選択肢で整理しています。受験資格・試験科目・費用の詳細は高卒認定試験とは?受験資格・試験科目・費用を解説にまとめました。
高卒認定からの大学受験を支援する仕組みを持つところもあります。国際高等学院には「高卒認定・大学受験コース」があり、トライ式高等学院も「高卒認定試験の方(高卒認定から大学受験)」という案内を出しています。星槎国際高等学校は転編入生向けに、高卒認定試験を併用して必要科目のみを学習する科目履修制度を案内しています。
通学しない大学という選択肢
大学のほうにも通信制があります。通信教育課程を持つ大学に進めば、通学を前提にせずに学士の学位を取得できます。インターネット完結型の大学もあり、スクーリングの負担が小さい設計になっているところもあります。
通信制大学を検討するときの確認点は、通信制高校を選ぶときとよく似ています。スクーリングの日数と会場、卒業までに必要な単位数、学費の総額、そして卒業率です。大学の通信教育課程は入学の門戸が広い一方、卒業までたどり着く割合が高くないことが知られています。入りやすさではなく続けやすさで選んでください。
体調や生活リズムが安定しないうちは、通学を前提とした大学を選ぶと入学後に苦しくなることがあります。高校のときと同じで、進学できるかどうかと、通い続けられるかどうかは別の問題です。
進学を重視するなら学校選びで見る5項目
- 進学支援がどの型か。系列予備校型、専用コース型、推薦枠型、支援なし型のどれか
- その支援が自分のコースで受けられるか。通学コース限定になっていないか
- 追加費用がいくらか。専用コースの学費差、予備校の費用、特別プランの学納金
- 評定の付け方。推薦を狙うなら、何をどう評価されるのかを1年目に知っておく
- 直近の合格実績と、その生徒がいたコース。学校全体の実績ではなく、自分が入るコースの実績を聞く
よくある質問
通信制高校からでも大学を受験できますか
できます。通信制高校を卒業すると全日制と同じ高校卒業の資格が得られ、大学の出願資格に課程による区別はありません。
指定校推薦は使えますか
枠を持っている学校であれば使えます。屋久島おおぞら高等学校のように指定校推薦枠があると公式サイトに記載している学校もあります。ただし、どの大学に何枠あるかは公開されていないことが多く、コースによって対象外になる場合もあります。入学前の個別相談で確認してください。
通信制高校でも評定はつきますか
つきます。レポートの内容と単位認定試験の成績で決まります。推薦を狙う場合は評定平均が条件になるため、単位が取れればよいという進め方をしていると、3年目に推薦の条件を満たせないことがあります。
学校の受験対策だけで足りますか
学校とコースによります。校内で受験対策まで行うと説明している学校もありますが、水準には差があり、志望校によっては外部の予備校を併用することになります。説明会では対策の内容より、直近の合格実績とその生徒がどのコースにいたかを聞くと実態が分かります。
合格実績はどう読めばよいですか
母数と対象コースを確認してください。当サイトで34校を調べた範囲では、進学率を具体的な数値で公表している学校は少数で、多くは合格した大学名を挙げるにとどまっています。週5日通学の特進コースの実績を、自宅学習中心のコースを選ぶ人がそのまま参考にはできません。
高卒認定から大学を受けるのとどちらがよいですか
大学に進学して卒業する前提なら、どちらでも最終学歴は大学卒業になります。ただし途中で進学をやめた場合、高卒認定では最終学歴が中学卒業のままです。高校に在籍することの負担と、その差をどう見るかで判断してください。
通信制大学という選択肢はどうですか
通学を前提にせずに学士の学位を取得できます。検討するときの確認点は通信制高校とよく似ていて、スクーリングの日数と会場、必要な単位数、学費の総額、そして卒業率です。入りやすさではなく続けやすさで選んでください。
進学に強い学校を選べば安心ですか
進学支援が手厚い学校は、通学頻度が高いコースであることが多く、学費も上がります。通えなければ意味がないので、まず通える頻度を決め、そのコースで受けられる支援は何かという順番で見てください。
まとめ
通信制高校から大学へ進む道は制度上ふさがっていません。差がつくのは学校の支援の形で、系列予備校型・専用コース型・推薦枠型・支援なし型の4つに分かれます。どれが良いということではなく、志望校と通える頻度によって噛み合う型が変わります。
確認の順番としては、通える頻度を決める、そのコースで受けられる支援を確認する、追加費用を計算する、評定の付け方を聞く、最後にコース別の合格実績を聞く。この順で進めれば、パンフレットの合格実績に引きずられずに判断できます。
学校ごとの学費は通信制高校の学費を地域別に比較、卒業要件の仕組みは通信制高校で卒業できない理由、進路全体の整理は不登校の子が高校に進むときの選択肢にまとめています。進学ではなく就職を選んだ卒業生がどこへ進んだかは通信制高校を卒業した後の就職はどうなるかで、学校基本調査の数値を全日制と並べて確認しました。
出典:当サイトで確認した各校の公式サイト・募集要項/文部科学省「高等学校卒業程度認定試験」。確認日2026年9月10日。