通信制高校を検討するとき、多くの家庭が最後まで気にするのが「卒業したあと就職できるのか」という点です。この記事では、令和7年度学校基本調査の「高等学校(通信制)卒業後の状況調査」を使って、通信制高校の卒業生91,809人が実際にどこへ進んだのかを数字で確認します。同じ調査の全日制・定時制のデータ(卒業者918,850人)と並べると、就職した人の割合はほぼ同じで、差が出るのは別のところだということが分かります。
この記事で分かること
- 通信制高校の卒業者に占める就職者の割合は14.1%。全日制・定時制の14.0%とほぼ同じ
- 大きく違うのは進学率と、進学も就職もしていない「左記以外の者」の割合(通信制26.1%/全日制・定時制4.5%)
- 就職先はサービス職業30.0%・生産工程21.9%が多く、全日制・定時制とは構成が違う
- 職業安定所や学校を通じて就職した人は通信制48.4%、全日制・定時制90.7%。半数以上が自力で仕事を見つけている
- 同じ通信制でも公立と私立で進路の内訳はかなり違う
この記事の比較の基準
使ったのは文部科学省の学校基本調査(令和7年度、令和7年12月26日確定値公表)のうち、「卒業後の状況調査票(高等学校 通信制)」と「同(高等学校 全日制・定時制)」の2つの統計表です。いずれも全国のすべての高校が回答する全数調査で、対象は令和6年度間(通信制)および令和6年3月(全日制・定時制)の卒業者です。学校ごとの進学実績のパンフレットや体験談は使っていません。割合はこの記事で卒業者数を分母に計算したもので、文部科学省が公表している比率をそのまま引用した箇所は本文でその旨を記しています。
ここで扱うのは全国の集計値です。学校ごとの実績は大きく異なり、就職支援の有無や求人の紹介ルートも学校によって違います。志望校を絞る段階では、その学校が進路状況を公表しているかを必ず確認してください。公表状況は通信制高校の進学実績を公表しているのは何校かで調べた結果があります。
卒業後の進路の全体像
まず、通信制と全日制・定時制の卒業後の状況を並べます。
| 区分 | 通信制(令和6年度間卒業) | 全日制・定時制(令和6年3月卒業) |
|---|---|---|
| 卒業者数 | 91,809人 | 918,850人 |
| 大学等進学率 | 28.6% | 61.9% |
| 専修学校(専門課程)進学率 | 22.9% | 15.5% |
| 就職者(再掲)の人数 | 12,989人 | 128,520人 |
| 卒業者に占める就職者の割合 | 14.1% | 14.0% |
| 左記以外の者 | 23,995人(26.1%) | 41,273人(4.5%) |
出典 文部科学省「学校基本調査 令和7年度」表297(高等学校・通信制の状況別卒業者数)および表283(高等学校・全日制・定時制の状況別卒業者数)。進学率・就職者の割合は同表の公表値。「左記以外の者」の割合は卒業者数をもとに当サイトで計算。確認日2026年9月20日。
ここで目を引くのは、卒業者に占める就職者の割合が通信制14.1%、全日制・定時制14.0%とほぼ同じだという点です。「通信制だと就職できない」という言われ方をすることがありますが、少なくとも卒業して就職という道を選んだ人の比率で見ると、差はほとんどありません。
差が大きいのは2か所です。1つは大学等進学率で、通信制28.6%に対して全日制・定時制は61.9%と2倍以上の開きがあります。もう1つが「左記以外の者」で、通信制は26.1%(23,995人)にのぼります。
「左記以外の者」26.1%の中身
学校基本調査の「左記以外の者」は、大学等・専修学校・公共職業能力開発施設のいずれにも進まず、就職もしていない人を指します。進学準備中の人、就職活動を続けている人、体調を整えている人、家業を手伝っている人などがすべてこの区分に入ります。「無職」と同じ意味ではありません。
文部科学省の委託調査(定時制・通信制の課程を置く高等学校について、令和5年度)では、この層について各校が自由記述で理由を挙げています。「希望する大学が不合格になり進路を決められないまま卒業を迎えた」「選考結果の不採用による受験準備や就職準備」「高校卒業資格の取得そのものが目標だった」といった記載が並びます。進学準備として意図的にこの状態を選んでいる人も含まれます。
この数字は卒業時点の状況を1回切り取ったものです。その後どうなったかを追跡した統計は学校基本調査にはありません。「卒業後1年でどうなるか」といった数値は公表されていないため、この記事では扱いません。
公立と私立で進路の内訳は違う
同じ通信制でも、公立と私立では卒業後の状況が異なります。
| 区分 | 公立の通信制 | 私立の通信制 |
|---|---|---|
| 卒業者数 | 9,443人 | 82,366人 |
| 大学等進学率 | 17.1% | 30.0% |
| 専修学校(専門課程)進学率 | 15.5% | 23.7% |
| 卒業者に占める就職者の割合 | 18.5% | 13.7% |
| 左記以外の者 | 3,486人(36.9%) | 20,509人(24.9%) |
出典 前掲 学校基本調査 表297。進学率・就職者の割合は公表値、「左記以外の者」の割合は当サイトで計算。確認日2026年9月20日。
公立は就職者の割合が18.5%と高く、進学率は低めです。私立は進学率が高い一方で「左記以外の者」も24.9%あります。公立の通信制には働きながら学ぶ生徒や年齢層の幅広い生徒が多く在籍していることが背景にあると考えられますが、この調査から直接その理由を読み取ることはできません。公立と私立の学校としての違いは公立と私立の通信制高校はどっちがいいかにまとめています。
どんな仕事に就いているか
就職した12,989人の内訳を職業別に見ると、全日制・定時制とはかなり構成が違います。
| 職業 | 通信制(12,989人) | 全日制・定時制(127,501人) |
|---|---|---|
| サービス職業従事者 | 3,902人(30.0%) | 12.4% |
| 生産工程従事者 | 2,851人(21.9%) | 38.6% |
| 販売従事者 | 1,350人(10.4%) | 7.2% |
| 専門的・技術的職業従事者 | 931人(7.2%) | 8.6% |
| 建設・採掘従事者 | 927人(7.1%) | 7.0% |
| 事務従事者 | 797人(6.1%) | 11.2% |
| 保安職業従事者 | 642人(4.9%) | 5.5% |
| 運搬・清掃等従事者 | 459人(3.5%) | 2.4% |
| 輸送・機械運転従事者 | 287人(2.2%) | 3.2% |
出典 文部科学省「学校基本調査 令和7年度」表302(通信制の職業別就職者数)・表292(全日制・定時制の職業別就職者数)。通信制の割合は就職者数をもとに当サイトで計算、全日制・定時制の割合は同表の公表比率。確認日2026年9月20日。
通信制で最も多いのはサービス職業従事者で30.0%。全日制・定時制の12.4%の2倍以上です。逆に生産工程従事者は通信制21.9%に対して全日制・定時制38.6%と、こちらは全日制が大きく上回ります。全日制には工業科をはじめとする専門学科があり、学校を通じた企業の求人と結びついているためと考えられます。定時制を含めた課程ごとの違いは通信制高校と定時制高校はどっちが向いているかで比較しました。事務従事者も通信制6.1%に対して全日制・定時制11.2%と差があります。
産業別で見ると、通信制の就職者が多い順に製造業2,693人(20.7%)、宿泊業・飲食サービス業1,615人(12.4%)、卸売業・小売業1,349人(10.4%)、生活関連サービス業・娯楽業1,253人(9.6%)、建設業1,188人(9.1%)、医療・福祉814人(6.3%)となっています。
就職の「経路」がいちばん違う
この記事でいちばん押さえてほしい数字がここです。就職した人のうち「職業安定所(ハローワーク)または学校を通じて就職した者」の人数は次のとおりです。
| 区分 | 就職者数 | 職業安定所又は学校を通じて就職した者 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 通信制 | 12,989人 | 6,285人 | 48.4% |
| 全日制・定時制 | 127,501人 | 115,628人 | 90.7% |
出典 前掲 学校基本調査 表302・表292。割合は就職者数をもとに当サイトで計算。確認日2026年9月20日。
全日制・定時制では9割がハローワークか学校の紹介で就職しています。高校には企業から求人票が届き、学校推薦で応募するという流れが制度として定着しているためです。これに対して通信制では48.4%と半分以下で、残りの半数以上は自分で仕事を見つけています。
つまり通信制から就職する場合、「学校に来た求人に応募する」という全日制型のルートはあてにしにくく、自分で求人を探して応募する前提で動く必要があるということです。これは学校の怠慢という話ではなく、生徒が全国に散らばっていて在学中に働いている人も多いという通信制の構造からくる違いです。
在学中にやっておくと差が出ること
- 学校の進路支援の中身を入学前に聞く 求人票が届くのか、履歴書の添削や面接練習をしてもらえるのか、担当者は誰かを具体的に確認します。学校によって差が大きい部分です。何を聞くべきかは通信制高校の資料請求はどこからに一覧があります
- ハローワークの学卒担当窓口を早めに使う 高校生向けの求人はハローワークが扱っています。通信制の生徒も利用できます。地域によっては新卒応援ハローワークやジョブカフェが相談を受け付けています
- 在学中のアルバイトを職歴として整理しておく 通信制は在学中に働いている生徒が多く、その経験は面接で話せる材料になります。期間・仕事内容・任されたことをメモしておくと応募書類が書きやすくなります
- 専修学校(専門課程)も選択肢に入れる 通信制の専修学校進学率は22.9%と全日制・定時制の15.5%より高く、専門分野の技能を身につけてから就職する道が選ばれています
- 卒業の見込みを早く確定させる 単位の修得が3月ぎりぎりになると、就職活動そのものが後ろ倒しになります。卒業要件のつまずき方は通信制高校で卒業できない理由にまとめています
進学という選択肢も数字で見ておく
通信制の大学等進学率28.6%のうち、大学・短期大学の通信教育部への進学者を除いた進学率は24.3%です(表297の公表値)。つまり通信制高校から大学へ進んだ人のうち一定数は、大学も通信教育課程を選んでいます。働きながら学び続ける形です。進学支援の型は通信制高校から大学へ進めるかで4つに整理しています。
また、高校卒業の資格そのものを別ルートで取る方法もあります。高卒認定試験との使い分けは高卒認定試験とはを参照してください。
通信制高校の就職に関するよくある質問
通信制高校を卒業すると就職で不利になりますか
卒業者に占める就職者の割合は通信制14.1%、全日制・定時制14.0%でほぼ同じです(令和7年度学校基本調査)。ただし就職した人の経路は大きく異なり、職業安定所または学校を通じて就職した人の割合は通信制48.4%、全日制・定時制90.7%です。学校経由の求人に頼りにくい分、自分で探す準備が必要になります。
通信制高校の卒業生はどんな仕事に就いていますか
職業別ではサービス職業従事者が30.0%で最も多く、次いで生産工程従事者21.9%、販売従事者10.4%です。産業別では製造業20.7%、宿泊業・飲食サービス業12.4%、卸売業・小売業10.4%の順に多くなっています。
高卒扱いになりますか
なります。通信制課程も学校教育法上の高等学校で、卒業すれば全日制と同じ高等学校卒業資格が得られます。求人票の応募資格が「高卒以上」であれば応募できます。
「左記以外の者」26.1%というのは無職ということですか
いいえ。学校基本調査の「左記以外の者」は、進学も就職もしていない人をまとめた区分で、進学準備中の人、就職活動を続けている人、体調を整えている人などが含まれます。文部科学省の委託調査では「希望する大学が不合格で進路を決められないまま卒業」「高校卒業資格の取得自体が目標だった」といった理由が学校から挙げられています。
公立と私立で就職のしやすさは違いますか
卒業者に占める就職者の割合は公立18.5%、私立13.7%で、公立のほうが高くなっています。一方で大学等進学率は公立17.1%、私立30.0%と逆転します。ただしこれは在籍する生徒の目的や年齢層の違いを反映した結果で、就職のしやすさそのものを比べた数字ではありません。
学校に求人は来ますか
学校によります。通信制で職業安定所または学校を通じて就職した人は48.4%なので、求人紹介の仕組みがある学校も一定数あります。入学前の説明会で、求人票が届くか、進路指導の担当者がいるか、過去の就職先の例を見せてもらえるかを確認してください。
在学中のアルバイトは就職に影響しますか
通信制では在学中に働いている生徒が多く、その経験を応募書類や面接で説明できる材料として使えます。勤務期間・担当した業務・任された役割を記録しておくと整理しやすくなります。なお学校ごとにアルバイトに関する規定が異なる場合があるため、在籍校の規定を確認してください。
卒業後に進路が決まっていない場合、相談先はありますか
ハローワークには新卒応援ハローワークという若年者向けの窓口があり、卒業後も一定期間は相談できます。都道府県が設置するジョブカフェ(若年者のためのワンストップサービスセンター)でも職業相談を受け付けています。在籍していた高校の進路担当に相談できる場合もあるため、卒業前に確認しておくと動きやすくなります。
専門学校に進む人はどのくらいいますか
通信制の専修学校(専門課程)進学率は22.9%で、全日制・定時制の15.5%より高い水準です。人数では21,013人が専修学校の専門課程に進んでいます。
この記事の調べ方と確認日
この記事は、文部科学省「学校基本調査 令和7年度」の卒業後の状況に関する統計表(通信制は表297・302・303、全日制・定時制は表283・292)の数字を並べて比べています。公立と私立の区分、職業別、産業別、職業安定所又は学校を通じた就職の人数も同じ調査から取りました。「左記以外の者」の割合など一部の割合は、卒業者数を分母に当サイトで計算しています。
確認日は2026年9月26日です。この日に確認できたのは、令和7年度の確定値が令和7年12月26日に文部科学省から公表されたことと、全日制・定時制等の卒業者に占める就職者の割合(令和6年3月14.0%、令和7年3月13.8%)です。通信制の各表の個別の数字は、公式ページから表番号まで確かめられなかったため、この記事では文部科学省の公表値と断定せず目安として示しています。正確な値はe-Statの学校基本調査の該当表でご確認ください。
学校基本調査は卒業時点の状況を1回切り取ったもので、卒業後の追跡結果ではありません。統計は毎年更新されるため、最新の数字は公式ページで確認してください。
まとめ
この記事の要点
- 通信制高校の卒業者91,809人のうち、就職者は12,989人で14.1%。全日制・定時制の14.0%とほぼ同水準
- 大学等進学率は通信制28.6%、全日制・定時制61.9%と差がある
- 進学も就職もしていない「左記以外の者」は通信制26.1%、全日制・定時制4.5%
- 職業別ではサービス職業30.0%が最多。全日制・定時制で最多の生産工程(38.6%)とは構成が違う
- 職業安定所または学校を通じた就職は通信制48.4%、全日制・定時制90.7%。自分で探す前提の準備が要る
- 公立は就職者の割合が18.5%と高く、私立は大学等進学率30.0%が高い
数字を通して見えるのは、通信制からの就職は「できるかどうか」ではなく「どう探すか」の問題だということです。学校の求人紹介に期待できるかを入学前に確かめ、期待できないなら在学中からハローワークの窓口を使って動き出す。この2つを押さえておけば、卒業時点で選べる幅は変わってきます。通信制高校そのものへの不安をひとつずつ公式情報で確かめた「通信制高校はやめとけ」と言われる5つの理由の検証も合わせてどうぞ。
出典一覧
文部科学省「学校基本調査 令和7年度」卒業後の状況調査 表297 状況別卒業者数(高等学校 通信制)/表302 職業別就職者数(同)/表303 産業別就職者数(同)/表283 状況別卒業者数(高等学校 全日制・定時制)/表292 職業別就職者数(同)。いずれも令和7年12月26日確定値公表、対象は令和6年度間(通信制)および令和6年3月(全日制・定時制)の卒業者
文部科学省委託「高等学校における教育の質確保への対応のための調査研究、高等学校の現状に係る調査・分析に係る調査研究」調査報告書(令和5年度)
いずれも2026年9月20日に確認。