通信制高校の卒業条件は、多くの学校で「74単位以上の修得」「3年以上の在籍」「特別活動への参加」の3つで説明されます。当サイトの学校別記事40本(通信制高校37校とサポート校3校)の「卒業するために必要なこと」の節を読み直したところ、この3つをすべて数字で書いていたのは40本中22本でした。残りの18本は、何が抜けているかが学校ごとに違います。この記事では、国の基準の原文、集計の結果、学校が独自に足している条件を順に整理します。
この記事の要点
- 74単位・3年以上・特別活動の時間数の3つをすべて数字で書いていたのは40本中22本
- 条件ごとに見ると、74単位は32本、3年以上は29本、特別活動の時間数は22本に書かれていた
- 残り18本の抜け方は「特別活動の時間数だけない」5本、「74単位だけある」5本、「3年以上だけある」2本、「どれも数字がない」6本に分かれる
- 数字が書かれていなくても、国の基準(3年以上・74単位以上・特別活動は卒業までに30単位時間以上)は全校に適用される
国が定めている卒業の基準
学校ごとの書き方を比べる前に、すべての通信制高校にかかる国の基準を原文で確認しておきます。学校の公式サイトに数字がなくても、ここに書かれた基準は変わりません。
在籍期間: 学校教育法第56条
学校教育法第56条は、高等学校の修業年限を「定時制の課程及び通信制の課程については、三年以上とする」と定めています。全日制は「三年」で、通信制と定時制は「三年以上」です。3年より短い期間で卒業することは、この条文の範囲では想定されていません。
単位数: 学校教育法施行規則第96条
学校教育法施行規則第96条第1項は、校長が全課程の修了を認めるのは「七十四単位以上を修得した者について」と定めています。74単位は下限です。学校によっては、これより多い単位を履修する設計になっています。
特別活動: 高等学校学習指導要領 総則 第2款5(7)
平成30年告示の高等学校学習指導要領は、通信制の課程の特例として、特別活動を「ホームルーム活動を含めて、各々の生徒の卒業までに30単位時間以上指導するもの」としています。年間ではなく、卒業までの合計で30単位時間以上という定めです。特別の事情がある場合は、ホームルーム活動と生徒会活動の内容の一部を行わないこともできます。
同じ第2款5の(5)には、メディアを利用した学習による免除の定めがあります。ラジオやテレビなど多様なメディアを利用した学習を計画的かつ継続的に取り入れ、報告課題の作成などで成果が満足できると認められる場合、面接指導の時間数または特別活動の時間数のうち10分の6以内を免除できます。生徒の実態などから特に必要な場合は、複数のメディアでそれぞれ10分の6以内、合わせて10分の8を超えない範囲まで免除できます。
添削指導と面接指導の標準
同じ第2款5の(1)は、1単位あたりの添削指導の回数と面接指導の単位時間数の標準を教科ごとに示しています。1単位時間は50分です。レポートとスクーリングの量はこの標準をもとに組まれます。
| 教科・科目 | 添削指導(1単位につき) | 面接指導(1単位につき) |
|---|---|---|
| 国語・地理歴史・公民・数学の科目 | 3回 | 1単位時間 |
| 理科の科目 | 3回 | 4単位時間 |
| 保健体育のうち体育 | 1回 | 5単位時間 |
| 保健体育のうち保健 | 3回 | 1単位時間 |
| 芸術・外国語 | 3回 | 4単位時間 |
| 家庭・情報・専門教科 | 科目の必要に応じて2〜3回 | 科目の必要に応じて2〜8単位時間 |
スクーリングの日数がどう決まるかは通信制高校のスクーリングは何日?で詳しく扱っています。
集計の結果
学校別記事40本の「卒業するために必要なこと」の節を人が読み、次の3つが数字で書かれているかを1本ずつ判定しました。
- A: 74単位以上の修得を明記している
- B: 3年以上(または3年間)の在籍を明記している
- C: 特別活動の時間数(30時間・30単位時間・36時間など)を数字で書いている
学校によって「30時間」と書くところと「30単位時間」と書くところがありますが、Cの判定ではどちらも数字が書かれているものとして数えています。
| 数字で書かれていた条件 | 該当数(40本中) |
|---|---|
| A 74単位以上の修得 | 32本 |
| B 3年以上・3年間の在籍 | 29本 |
| C 特別活動の時間数 | 22本 |
| 3条件すべて | 22本 |
特別活動の時間数を書いていた22本は、そのまま3条件すべてを書いていた22本と同じ顔ぶれでした。時間数まで書く学校は、74単位と3年以上もあわせて書いています。逆に、74単位や3年以上を書いていても特別活動の時間数だけは書いていない学校があり、ここが学校ごとの差になっています。
組み合わせ別に見た40本の内訳
3つの条件のどれを書いていて、どれを書いていないかで分けると、40本は5つのグループに分かれます。1は記載あり、0は記載なしです。
| 組み合わせ | 中身 | 該当数 |
|---|---|---|
| A1 B1 C1 | 3条件すべてを数字で記載 | 22本 |
| A1 B1 C0 | 74単位と3年以上はあるが、特別活動の時間数がない | 5本 |
| A1 B0 C0 | 74単位だけを記載 | 5本 |
| A0 B1 C0 | 3年以上だけを記載 | 2本 |
| A0 B0 C0 | 3条件とも数字の記載なし | 6本 |
3条件すべてを数字で書いていた22本
クラーク記念国際高等学校、飛鳥未来高等学校、鹿島学園高等学校、八洲学園高等学校、精華学園高等学校、星槎国際高等学校、中央国際高等学校、わせがく高等学校、翔洋学園高等学校、駿台甲府高等学校、ヒューマンキャンパス高等学校、あずさ第一高等学校、NHK学園高等学校、飛鳥未来きずな高等学校、鹿島朝日高等学校、松本国際高等学校、ヒューマンキャンパスのぞみ高等学校、大阪つくば開成高等学校、滋慶学園高等学校、横浜修悠館高等学校、厚木清南高等学校、ID学園高等学校
このうち横浜修悠館と厚木清南は公立の通信制高校です。書いている場所は学校によって違い、「卒業の条件」の専用ページに並べている学校もあれば、転入学・編入学のページやよくある質問の中で触れている学校もあります。
特別活動の時間数だけがなかった5本
第一学院高等学校、屋久島おおぞら高等学校、勇志国際高等学校、北海道芸術高等学校、東海大学付属望星高等学校
このグループは特別活動に触れていないわけではありません。第一学院はよくある質問で特別活動の修得に触れ、屋久島おおぞらは「学校行事に決められた回数参加」と書き、勇志国際は「特別活動の必要時間数を満たす」と書いています。いずれも時間数の数字はありませんでした。
74単位だけを書いていた5本
N高等学校、代々木高等学校、明蓬館高等学校、S高等学校、R高等学校
代々木高等学校は2027年度募集要項に、卒業には74単位以上、標準の履修は75単位と書いています。3年以上の在籍と特別活動の時間数は、5本とも卒業要件の節に記載がありませんでした。
3年以上だけを書いていた2本
科学技術学園は修業年限を1989年から3年以上としています。必要な単位数と特別活動の条件は募集要項と公式サイトに明記がなく、74という数字は就学支援金の通算上限として出てくるだけでした。
3条件とも数字がなかった6本
ルネサンス高等学校、トライ式高等学院、日々輝学園高等学校、KTCおおぞら高等学院、天王寺学館高校、国際高等学院
6本のうち3本はサポート校で、卒業の条件そのものを持たない立場です(次の節で説明します)。残る3校のうち、日々輝学園は卒業に必要な最低単位数を公式ページに載せておらず、教育課程表の履修合計は進学コースで80単位、総合STコースで78単位です。天王寺学館は総単位数の数字を載せていませんが、体育だけは7単位以上と定めています。
サポート校3校に数字がない理由
トライ式高等学院、KTCおおぞら高等学院、国際高等学院の3校はサポート校です。高校卒業の資格を出すのは連携している通信制高校なので、卒業の条件も連携校の基準に従います。KTCおおぞら高等学院であれば、在籍する屋久島おおぞら高等学校の基準です。サポート校の記事に卒業要件の数字がないのは、学校の仕組みからくるものです。サポート校を検討するときは、どの通信制高校に在籍することになるかを確かめ、その学校の条件を見てください。
3条件のほかに学校が足している条件
国の基準は下限なので、学校はその上に独自の条件を置くことができます。学校別記事に書かれていた主なものを表にまとめました。
| 学校 | 足している条件・注意点 |
|---|---|
| 中央国際高等学校 | 本校に6か月以上在籍し8単位以上を修得(転入学は3か月以上・8単位以上)。「入学までの流れ」では10単位以上と書かれており、公式ページ間で数字が一致していない |
| 松本国際高等学校 | 本校に半年以上在籍。理科は「科学と人間生活」を含む2科目、または「基礎」を付した3科目の履修が必須。特別活動は修得単位に入らず、30時間以上の出席が必要 |
| 星槎国際高等学校 | 単位は1学期(3か月)以上在籍しないと認定されない。卒業できるのは6月・9月・12月・3月の学期末 |
| NHK学園高等学校 | 必修科目・履修条件科目の履修と、在籍期間の学費・諸費用の全納。休学期間は在籍期間に含めない |
| 勇志国際高等学校 | 必履修科目の履修と学費・諸費用の全納。単位認定の要件に評定2以上 |
| ID学園高等学校 | 必履修科目と総合的な探究の時間を含む74単位以上。校納金の完納 |
| 翔洋学園高等学校 | 本校では75〜77単位を履修する設計 |
| 代々木高等学校 | 標準の履修は75単位 |
| 鹿島学園高等学校 | 特別活動は36時間以上(国の最低30単位時間より多い)。2026年度の特別活動予定表では1回1〜5時間 |
| 精華学園高等学校 | 卒業は9月と3月の年2回 |
| 厚木清南高等学校 | 半期ごとの単位認定で、9月末にも卒業できる仕組み |
| 天王寺学館高校 | 体育だけは7単位以上が必要。卒業に必要な総単位数の数字は公式に載っていない |
表を見ると、学校が足している条件は大きく4種類あります。本校での最低在籍期間、科目の指定、学費の全納、卒業できる時期です。74単位・3年以上・特別活動の3つを満たしていても、これらのどれかが欠けると卒業の時期がずれることがあります。
「書かれていない」は「条件がない」ではない
特別活動の時間数を書いていなかった18本も、特別活動が要らないわけではありません。卒業までに30単位時間以上という定めは学習指導要領にあり、学校が数字を書いていなくても全校に適用されます。74単位以上と3年以上も同じで、法令の定めなので学校の書き方で変わるものではありません。
当サイトの学校別記事では、公式に確認できなかった数字を推測で埋めず、「記載なし」として扱っています。比べるときも、記載がないことを「条件がない」と読まず、確認しておく項目の一覧として使うのが現実的です。
学校を選ぶときの見方
- 74単位・3年以上・特別活動30単位時間以上は国の基準なので、どの学校でも変わらない。比べるのはその上に学校が何を足しているか
- 特別活動の時間数が書かれていない学校では、卒業までに何時間必要か、行事は1回何時間くらいかを聞く。鹿島学園のように36時間以上と定める学校もある
- 転入や編入を考えているなら、前籍校の在籍期間をどう数えるか、本校で最低どれだけ在籍する必要があるかを確かめる。大阪つくば開成は前籍校を含めて3年以上、中央国際と松本国際は本校での在籍期間の条件がある
- 卒業できる時期は学校で違う。年2回(精華学園)、学期末の年4回(星槎国際)、9月末にも卒業できる仕組み(厚木清南)などがある
- 学費・諸費用の全納を卒業の条件に入れている学校がある(NHK学園・勇志国際・ID学園)
- サポート校を選ぶときは、在籍することになる連携校の卒業条件を見る
- 公式ページ同士で数字が食い違っている場合(中央国際の8単位と10単位など)は、どちらが正しいかを学校に直接たずねる
卒業でつまずく例は通信制高校で卒業できない人がいるのはなぜかにまとめています。
よくある質問
74単位という基準はどの通信制高校でも共通ですか
共通です。学校教育法施行規則第96条が、全課程の修了は74単位以上を修得した者について認めると定めています。当サイトの学校別記事40本のうち、74単位を明記していたのは32本でした。翔洋学園(75〜77単位を履修)や代々木高校(標準の履修は75単位)のように、74単位より多く履修する設計の学校もあります。
特別活動の時間数が書かれていない学校は、参加しなくてよいのですか
いいえ。学習指導要領は、通信制の課程の特別活動を卒業までに30単位時間以上指導するものと定めており、学校が数字を書いていなくても適用されます。40本中18本は時間数の記載がなかったので、必要な時間数と行事の内容は学校に確認してください。
特別活動の時間数が36時間の学校があるのはなぜですか
国の基準は「30単位時間以上」と下限を定めたもので、学校がそれより多く定めることができます。当サイトで確認した中では、鹿島学園高等学校が特別活動を36時間以上としています。同校の2026年度の特別活動予定表では、1回あたり1〜5時間でした。
3年より早く卒業することはできますか
学校教育法第56条が通信制の課程の修業年限を「三年以上」と定めているので、3年より短くすることはできません。NHK学園のように休学期間を在籍期間に含めない学校もあり、その場合は卒業までの年数が延びます。
卒業要件を3条件とも数字で書いている学校を選んだほうがよいですか
書き方の丁寧さは判断材料の1つですが、それだけで学校の良し悪しは決まりません。3条件そのものは国の基準で全校共通です。差が出るのは、本校での在籍期間、科目の指定、学費の全納、卒業できる時期など、学校が足している条件のほうです。
サポート校の記事に卒業要件の数字がないのはなぜですか
サポート校は卒業資格を出す学校ではなく、卒業の条件は連携している通信制高校の基準に従うためです。トライ式高等学院、KTCおおぞら高等学院、国際高等学院の3校がこれにあたります。条件は在籍先の通信制高校で確認してください。
転入・編入すると卒業要件はどう変わりますか
74単位以上・3年以上という基準は変わりませんが、前籍校の期間の扱いや本校での最低在籍期間は学校で違います。大阪つくば開成は前籍校を含めて3年以上、中央国際は転入学の場合に本校で3か月以上・8単位以上、松本国際は本校に半年以上の在籍を求めています。転入の時期については通信制高校の転入・編入はいつできる?で解説しています。
まとめ
当サイトの学校別記事40本のうち、74単位・3年以上・特別活動の時間数の3つをすべて数字で書いていたのは22本でした。残りの18本は、特別活動の時間数だけがない学校、74単位だけを書く学校、3年以上だけを書く学校、どれも数字がない学校に分かれ、抜けている項目は学校ごとに違います。
3つの条件は国の基準なので、書かれていなくても全校に適用されます。学校を比べるときは、記載のない項目を確認先の一覧として使い、学校が独自に足している条件を見落とさないようにしてください。
スクーリングの日数は通信制高校のスクーリングは何日?、進路全体の整理は不登校の子が高校に進むときの選択肢にまとめています。全日制から転校する場合に見誤りやすい点は全日制から通信制へ転校して後悔しないための確認事項で扱っています。
この記事の調べ方と確認日
確認日は2026年10月10日です。対象は、この日の時点で公開している当サイトの学校別記事40本(通信制高校37校・サポート校3校)です。各記事の「卒業するために必要なこと」の節を人が読み、74単位以上、3年以上の在籍、特別活動の時間数の3つが数字で書かれているかを1本ずつ判定しました。語句の検索だけでは別の文脈の「3年」などを拾ってしまうため、節の本文を読んで判断しています。
法令と告示は原文で確認しました。学校教育法第56条と学校教育法施行規則第96条はe-Gov法令検索で、高等学校学習指導要領(平成30年告示)第1章総則 第2款5は文部科学省のPDFで読んでいます。
2026年9月10日に公開した旧版では、37校を対象に、74単位15校、3年以上9校、特別活動の時間数3校、3条件すべて3校と書いていました。今回数字が大きく変わったのは、10月4日から9日にかけて学校別記事を公式サイトと照らし合わせて大幅に書き足したことと、判定のしかたを変えたことの2つが理由です。旧版は記事全文に近い範囲を粗く判定しており、今回は対象の節を読んで判定しました。数字の増加は学校側が公表を増やした結果ではなく、当サイトの確認が進んだ結果です。旧版で3条件すべてに数えていた屋久島おおぞら高等学校は、公式の「卒業までの流れ」に特別活動の時間数の数字がなく(学校行事に決められた回数参加と書かれています)、3条件すべてに入れたのは誤りでした。2026年10月10日に公式ページの本文で確認し、今回は「特別活動の時間数だけがない」グループに入れています。また旧版では特別活動を「年間30単位時間以上が標準」と書いていましたが、学習指導要領の原文は「卒業までに30単位時間以上」です。
確認できていないこともあります。集計は各校の学校別記事の記載に基づいており、今回すべての学校の公式サイトを見直したものではありません。サポート校3校は連携校の基準に従うため、サポート校自体の卒業要件は判定の対象になっていません。卒業の認定は在籍校の校長が行い、制度や学校の規則は年度で変わることがあるので、最終的な条件は志望校の募集要項と公式サイトで確かめてください。