通信制高校を調べていると「やめとけ」「後悔する」といった言葉に行き当たります。書いている人の立場も根拠もばらばらで、そのまま受け取ってよいものか判断がつきません。
この記事では、よく挙げられる5つの懸念を、当サイトで学費や募集要項を確認した34校の公式情報と文部科学省の統計に照らして検証します。結論から言えば、当たっている指摘と、前提が古い指摘と、学校ごとに答えが違う指摘が混ざっています。どれがどれなのかを切り分けます。
5つの懸念の検証結果
- 卒業できないことがある → 当たっている。ただし原因は仕組みとの噛み合わせで、事前に確認できる
- 安いと聞いたのに高かった → 当たっている。費用が2階建ての学校と、就学支援金を引いた後でもコース差が20倍を超える学校がある
- 進路で不利になる → 学校ごとに違う。34校のうち進学率・就職率を数値公表しているのは少数
- 友だちができない → 選ぶコース次第。年数日の通学から週5日まで設計が違う
- サポートが薄い → 窓口の構造による。本校とサポート校が別組織の学校は、どちらが何を支えるかを入学前に確かめる
懸念1 卒業できないことがある
これは当たっています。通信制高校の卒業には、74単位以上の修得、3年以上の在籍、特別活動への参加という3つの要件があり、単位はレポート・スクーリング・試験の3つが揃って初めて認定されます。どれか1つの取りこぼしが、そのまま単位の未修得になります。
さらに、年間に履修できる単位数には上限(年間30単位程度)が設けられていることが多く、1年目に遅れると後から取り返しにくい構造になっています。25単位ずつ3年で74単位という設計なので、1年目が12単位で終わると、2年目3年目を上限いっぱいで走っても3年での卒業には届きません。
ただし、これは「通信制高校だから危ない」というより「自分でペースを管理する仕組みだから」という話です。入学前に確認すれば防げます。確認すべきは、スクーリングを欠席した場合の代替日程があるか、レポートが遅れたときの再提出の期限、日常的に進み具合を相談できる担任やチューターがいるかの3点です。詳しくは通信制高校で卒業できない理由は?3つの要件とつまずく4パターンで解説しています。
懸念2 安いと聞いたのに高かった
これも当たっています。原因は3つあります。
費用が2階建てになる学校がある
鹿島学園高等学校・鹿島朝日高等学校は、公式サイトで「3年間の合計負担額」を219,756円と示しています。これは授業料を就学支援金で相殺したあとの、4月入学の新入生の3年間の合計で、教科書代・任意講座・学習センター費用は含まれていません。この記事では、学校に学籍を置くためのこの部分を「本校籍」の費用と呼んでいます(公式の用語ではありません)。実際に通う学習センターや学習サポート施設の費用は別にかかります。サポート校の国際高等学院は学費を月51,500円(5Days)と月額で示していて、こうした費用を足すと総額は本校籍の何倍にもなります。サポート校を併用する場合も同じ構造です。
同じ学校の中でコース差が大きい
| 学校 | 最も安いコース | 最も高いコース | 差 |
|---|---|---|---|
| 八洲学園高等学校 | 年20,000円 | 年520,000円 | 26倍 |
| ヒューマンキャンパス高等学校 | 年92,000円 | 年532,000円 | 約5.8倍 |
比較サイトに載る「年20,000円から」という表記は最安コースのものです。最も高いベーシッククラスを選べば、就学支援金を引いた後の額でも同じ学校で26倍になります。学費表を見るとき、私が最初に確かめたいのは「この金額は就学支援金を引く前か後か」と「何が含まれていないか」の2点です。表の数字が同じ基準で並んでいるとは限らないからです。
学費表に出てこない費用がある
代表はスクーリングの交通費です。NHK学園高等学校のスタンダードコースは、月1〜2回スクーリング会場に通う形です。3年間に直すと36〜72回になります。片道1,000円の会場と3,000円の会場を比べると、往復で1回4,000円の差です。3年間では144,000円から288,000円の差になります。会場が遠く泊まりがけになれば、宿泊費も加わります。公開情報を読んでいて、5つの懸念の中でいちばん見落とされやすいのはこの費用だと感じました。学費表に1行も出てこないため、学校を比べる段階で頭から抜けやすいのです。
懸念3 進学や就職で不利になる
ここは慎重に見る必要があります。まず制度上の事実として、通信制高校を卒業して得られるのは全日制と同じ高校卒業の資格です。学歴の表記が変わるわけではありません。
一方で、学校を選ぶ材料としての情報公開には差があります。当サイトで学費や募集要項を確認した34校を数えたところ、次のような状況でした。
| 項目 | 34校中の状況 |
|---|---|
| 卒業率を具体的な数値で公表している学校 | 4校 |
| 進学率・就職率が非公表であると当サイトが確認した学校 | 10校 |
| 学費が公式サイトで非公開の学校 | 8校 |
卒業率を数値で公表している学校には、わせがく高等学校、ヒューマンキャンパス高等学校、トライ式高等学院などがあります。つまり「進路実績が分からないまま選ばざるを得ない学校が多い」というのが実態で、これは学校選びの難しさとして事実です。
ただし、公表されている卒業率は同じ物差しで測られていません。わせがく高等学校の99.0パーセントは、公式が「入学前不登校だった方」についての2025年度の数字として示しているものです。トライ式高等学院は本文で「99%以上」、図表で99.5パーセントとし、注記で「卒業対象者のうち、退学者を除いた割合」と説明しています。学院が2026年4月に自ら行った調査です。ヒューマンキャンパス高等学校の97パーセントは、公式ページに母数や調査年度の記載がありません。
分母が違えば、数字を並べて高い低いを言うことはできません。たとえば仮に100人が入学し、10人が途中で退学し、残る90人のうち89人が卒業したとします。退学者を除いた90人を分母にすると卒業率は約98.9パーセントですが、入学した100人を分母にすると89パーセントです。同じ学校の同じ結果でも、分母の取り方で10ポイント近く変わります。
この違いに気づきにくいのは、どの学校も同じ「卒業率」という言葉を使い、母数の説明は注記に小さく書かれているか、まったく書かれていないことが多いからだと私は考えています。説明会では、数字の分母が誰なのか、途中で退学した生徒や転出した生徒が含まれているのかを聞いてみてください。
懸念4 友だちができない、孤立する
これは選ぶコース次第としか言えません。同じ「通信制高校」でも、年数日のスクーリングだけで完結する形から、週5日通う形まで設計が違うからです。
| 通学の形 | 同年代との接点 | 例 |
|---|---|---|
| 年数日〜月1回 | ほとんどない | 翔洋学園のネットキャンパス、N高のネットコース |
| 週1〜2日 | 限定的だが継続的にある | 飛鳥未来のベーシック、精華学園の土曜登校制 |
| 週3〜5日 | 全日制に近い | わせがくの全日型、八洲学園のベーシック |
| オンラインの居場所を併用 | オンライン上のコミュニティ | クラスジャパン小中学園の部活動など(小中学生向け) |
交流を求めているのに、費用の安さでネットコースを選ぶと噛み合いません。逆に、人と会うこと自体が負担な時期に週5日のコースを選ぶと続きません。この懸念は、学校の良し悪しではなく選び方の問題です。コース別の在籍者数や、同級生の背景を国の調査データで確かめた内容は通信制高校で友達はできるかにまとめています。
懸念5 学校のサポートが薄い
これは学校の構造によります。特に注意が要るのは、本校と学習センター・サポート校が別組織になっている学校です。鹿島学園やKTCおおぞら高等学院のような形では、どちらに何を相談すればよいかが分からなくなり、結果としてレポートやスクーリングの管理が滞ることがあります。
ルネサンス高等学校は公式サイトで、提携校との連携によって専門分野を学べるオプションコース(卒業要件には含まれません)と、別のスクールと組み合わせる「ダブルスクールコース」を案内しています。こうしたコースを併用するときに費用が別にかかるのか、かかるならどこに払うのかは、説明会で聞いておくと確実です。翔洋学園高等学校のように学費体系がシンプルな学校もあります。「サポートが薄い」と言われる現象の多くは、窓口が分かれていることによる連絡の行き違いです。入学前に、日常の相談窓口がどこになるのかを1つに特定しておけば避けられます。窓口が1つの学校を選ぶことよりも、困ったときに最初に連絡する相手の名前を入学前に言える状態にしておくことのほうが、続けやすさに効くと私は見ています。
数字で見ると、この進路は例外的ではない
文部科学省の「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、小中学校の不登校児童生徒は353,970人です。中学校の生徒数(学校基本調査 令和7年度で310万5千人)と単純に比べれば、およそ14人に1人にあたります。
同じ調査では、自宅でのICT等を活用した学習を出席扱いとした児童生徒が13,261人、学校外の機関等での相談・指導を出席扱いとしたのが42,978人でした。学校以外の学びを制度として認める運用は、年々広がっています。自宅学習による出席扱いは令和元年度の608人から6年間で20倍以上になりました。制度の詳細は不登校の出席扱いとは?文部科学省が示す7つの要件と申請の進め方にまとめています。
「やめとけ」が当てはまる場合・当てはまらない場合
ここまでを踏まえると、忠告が当たるのは次のような選び方をしたときです。
- 学費の安さだけでコースを選び、通学頻度や交流の希望と噛み合っていない
- 本校籍やサポート校の費用構造を確認せずに総額を見積もった
- スクーリングの代替日程やレポートの再提出期限を確認しないまま入学した
- 相談窓口がどこになるかを決めないまま、複数組織にまたがる学校を選んだ
逆に、次のように進めれば、この忠告はほぼ当てはまりません。
- 通える頻度の上限を先に決め、そこからコースを絞った
- 費用は総額(学費+施設費+交通費)で比べた
- 卒業要件と、つまずいたときの手当てを入学前に確認した
- 日常の相談相手を1人に特定した
入学前に確認する7項目
- 卒業に必要な単位数と、年間に履修できる単位数の上限
- スクーリングの日数・会場と、欠席したときの代替日程の有無
- レポートが遅れたときの再提出の期限と、単位への影響
- 学費の総額(入学金・授業料・施設費・教材費・サポート校費用)
- スクーリングの交通費と宿泊の要否
- 日常的に相談できる担任・チューターの有無と、その窓口がどの組織か
- コース変更の可否と、変更した場合の費用
この7項目は、資料請求だけでは埋まりません。説明会や個別相談で聞くつもりで持っていってください。
よくある質問
通信制高校の卒業資格は全日制と違いますか
同じ高校卒業の資格です。学歴の表記が変わることはありません。通信制高校は学校教育法に基づく高等学校で、レポート・スクーリング・試験によって単位を修得し卒業します。
本当に卒業できない人がいるのですか
います。単位はレポート・スクーリング・試験の3つが揃って認定されるため、どれか1つの取りこぼしで未修得になります。年間の履修単位に上限があるため、1年目の遅れは取り返しにくい構造です。ただし入学前に代替日程や再提出期限を確認しておけば防げる範囲のことです。
学費が安いと聞いたのに高いという話は本当ですか
本当に起こります。学籍を置く学校の費用と学習サポート施設の費用が別々にかかる学校では、総額が学校の学費表の金額を大きく上回ります。同じ学校でも、就学支援金を引いた後の額でコースによって20倍以上の差がつく例があります。比較サイトの金額は最安コースを指していることが多いので、志望コースの金額が就学支援金の控除前か後か、教材費などが含まれているかを確認してください。
卒業率が高い学校を選べば安心ですか
数字の母数を確認してください。公表されている卒業率には、入学前に不登校だった生徒に限った数字や、卒業対象者から退学者を除いた割合として示された数字があり、母数が書かれていないものもあります。分母が違えば、数字を並べて比べることはできません。当サイトが確認した34校のうち、卒業率を具体的な数値で公表しているのは4校でした(2026年9月9日時点)。
友だちはできますか
選ぶコースによります。年数日の通学で完結するコースでは同年代との接点はほとんどありません。週3〜5日通うコースなら全日制に近い形になります。交流を求めるなら、費用より通学頻度でコースを選んでください。
サポートが薄いと言われるのはなぜですか
本校と学習センター・サポート校が別組織になっている学校で、どちらに相談すればよいか分からなくなるケースが多いためです。入学前に日常の相談窓口を1つに特定しておけば避けられます。
入学してから合わないと分かったらどうすればよいですか
他の通信制高校への転入という選択肢があります。在籍したまま移れば学籍が途切れず、前籍校での在籍期間や修得単位を引き継げる場合があります。退学してからでは空白期間が卒業時期の遅れになるため、辞める前に転入先の候補へ相談してください。
結局、通信制高校はやめたほうがよいのですか
選び方次第です。学費の安さだけでコースを決めたり、費用の構造や卒業要件を確認せずに入学したりすると、指摘されている問題は実際に起こります。通える頻度から逆算し、総額で比べ、卒業要件と相談窓口を確認してから決めれば、大半は避けられます。
まとめ
「やめとけ」という言葉の中身を分解すると、卒業の難しさと費用の分かりにくさという2つは実際に起こる問題でした。ただしどちらも、入学前の確認で避けられる範囲のことです。進路や交流に関する懸念は、学校ごと・コースごとに答えが違うため、一般論としては成立しません。
この分野でいちばん多い失敗は、学校名から探し始めることです。通える頻度を先に決め、総額で比べ、卒業要件と相談窓口を確認する。この順番を守れば、比べる学校は自然に絞れます。
費用の全体像は通信制高校の学費は結局いくらかかるか、学校別の金額は通信制高校の学費を地域別に比較、進路の選択肢そのものは不登校の子が高校に進むときの選択肢にまとめています。全日制から転校する場合に後悔しやすいパターンは全日制から通信制へ転校して後悔しないための確認事項で解説しています。
出典:当サイトで確認した34校の公式サイト・募集要項/文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」/同「令和7年度学校基本調査」。34校の集計は2026年9月9日時点。八洲学園・ヒューマンキャンパス・鹿島学園・鹿島朝日・わせがく・トライ式・NHK学園・ルネサンスの記載は2026年10月24日に各校の公式サイトで再確認。