学習面や対人面に特性のある子の進路を調べていると、「通信制高校なら合わせやすい」という説明をよく見かけます。ただ、実際に学校を比べる段になると、どこを見れば支援体制の違いが分かるのかがはっきりしません。この記事では、文部科学省の通級による指導実施状況調査と通信制高等学校実態調査から、高校で受けられる公的な支援の中身と、課程ごとの実施実績を確認します。学校選びのときに何を質問すればよいかを、数値で裏づけられる範囲に絞って整理します。
この記事は学校選びで確認できる制度と体制の話です。特性の有無や必要な支援の内容を判断するのは、医師や、学校の特別支援教育に関する校内委員会です。診断や医学的な判断に関わる内容は扱いません。また、特定の課程や学校が特定の状態の子に適している、という書き方もしていません。
この記事で分かること
- 高校でも「通級による指導」を受けられる。平成30年度から制度化され、令和4年度は全国で2,055人が利用
- 通信制課程で通級による指導を受けた生徒は118人。全日制1,081人・定時制856人と比べて極端に少ない
- 「必要と判断された2,915人」のうち860人は実際には受けていない
- 通信制に在籍する「特別な支援を必要とする生徒」の割合は各校平均で1割弱、人数ベースでは広域通信制15.7%
- 支援体制を比べるなら、通級の有無・特別支援教育コーディネーターの配置・スクールカウンセラーの相談日数の3点を聞く

この記事で使った資料
文部科学省「令和4年度 通級による指導 実施状況調査結果」(2024年11月公表、国公私立の小・中・高等学校が対象)、同「令和7年度通信制高等学校実態調査に関する調査結果」(2026年4月公表、通信制課程を置く323校が対象)、同委託調査「定時制・通信制の課程を置く高等学校について」(令和5年度、有効回答514校)、学校教育法施行規則の4つです。学校ごとの支援内容を全国規模で比較した統計は存在しないため、制度の枠組みと、課程別に集計されている実績の数値だけを扱います。
高校で受けられる「通級による指導」とは
通級による指導は、通常の学級に在籍して大半の授業を通常の学級で受けながら、障害による学習上・生活上の困難を改善・克服するための指導を別に受ける仕組みです。根拠は学校教育法施行規則第140条で、条文は次のように定めています。
「小学校、中学校、義務教育学校、高等学校又は中等教育学校において、次の各号のいずれかに該当する児童又は生徒(特別支援学級の児童及び生徒を除く。)のうち当該障害に応じた特別の指導を行う必要があるものを教育する場合には、文部科学大臣が別に定めるところにより……特別の教育課程によることができる。」(学校教育法施行規則第140条)
対象として条文に列挙されているのは、言語障害者、自閉症者、情緒障害者、弱視者、難聴者、学習障害者、注意欠陥多動性障害者、その他障害のある者で特別の教育課程による教育を行うことが適当なもの、の8区分です。高校での通級は平成30年度から制度化されました。条文上、高等学校の課程による限定はありません。
課程別の実施実績を見る
令和4年度の実績では、全国の高校で通級による指導を受けた生徒は2,055人でした。課程別の内訳は次のとおりです。
| 課程 | 利用を検討した生徒 | 必要と判断した生徒 | 実際に指導を行った生徒 |
|---|---|---|---|
| 全日制 | 2,083人 | 1,553人 | 1,081人 |
| 定時制 | 1,354人 | 1,220人 | 856人 |
| 通信制 | 144人 | 142人 | 118人(公立89・私立29) |
| 合計 | 3,581人 | 2,915人 | 2,055人 |
出典 文部科学省「令和4年度 通級による指導 実施状況調査結果」(2024年11月公表)。高等学校には中等教育学校後期課程を含む。令和6年能登半島沖地震の影響により石川県は国立学校のみの調査。確認日2026年9月20日。
目を引くのは通信制課程の118人という数字の小ささです。通信制課程には約30万人が在籍していますから、割合にすると極めて限られています。全日制1,081人・定時制856人と比べても桁が違います。通信制で通級による指導を受けられる学校を探す場合、選択肢はかなり絞られると考えたほうが実態に合います。
もう1つ押さえておきたいのが、「必要と判断した2,915人」に対して「実際に行った」のが2,055人にとどまっている点です。差の860人について、学校が挙げた理由で最も多かったのは「本人や保護者が希望しなかったため」(650人)でした。次いで「その他」154人、「校内教員等の関係者の理解が得られなかったため」26人、「通級による指導の担当教員の加配がつかず、巡回通級や他校通級の調整もできなかったため」24人と続きます。通信制課程の24人については、全員が「本人や保護者が希望しなかったため」でした。
なお、公立高校で通級による指導を受けている生徒が在籍する学校は全国で372校、公立高校全体の10.7%です。制度はあっても、実施している学校は10校に1校程度という段階にあります。
どれくらいの生徒が在籍しているか
文部科学省の委託調査では、各校が回答した「多様な背景を有する生徒」の在籍割合が課程別に集計されています。「特別な支援を必要とする生徒」(主に特別支援教育に係る校内委員会等において、現在特別な教育的支援が必要と判断されている生徒を想定した項目)の在籍割合は次のような水準でした。
| 項目 | 通信制 | 定時制 |
|---|---|---|
| 特別な支援を必要とする生徒(各校回答の平均) | 約1割弱 | 16.0% |
| 同(人数ベース。広域通信制/昼間定時制) | 15.7% | 15.8% |
| 心療内科などに通院歴のある生徒(各校回答の平均) | 21.2% | — |
| 小・中学校及び前籍校で不登校経験がある生徒 | 65.1% | 54.4% |
出典 文部科学省委託「高等学校における教育の質確保への対応のための調査研究」調査報告書(令和5年度、令和6年1月1日時点、有効回答514校)。1人の生徒に複数の背景がある場合は複数項目に計上されるため、項目間で重複がある。昼間定時制は「特別な支援を必要とする生徒」が25.7%と全課程で最も高い。確認日2026年9月20日。
同じ調査では、通信制における「心療内科などに通院歴のある生徒」は令和元年度と比べて増加傾向にある学校が51.2%、広域通信制では平成29年度時点と比べて16.6ポイント増(4.8%→21.4%)と報告されています。支援を必要とする生徒が一定数在籍していることを前提に、学校側も体制を整えつつある段階だと読み取れます。
通級以外の支援体制を比べる
通級による指導を実施している通信制高校は限られているため、実際の学校選びでは他の支援体制を見ることになります。実態調査で全国集計があるのは相談体制です。
| 項目 | 公立 | 私立 | 株式会社立 | 全体 |
|---|---|---|---|---|
| スクールカウンセラーに相談できる体制がある | 98.8% | 79.7% | 80.0% | 84.5% |
| スクールソーシャルワーカーに相談できる体制がある | 91.4% | 19.4% | 40.0% | 38.4% |
| 教員のうち専任の割合 | 68.9% | 40.1% | 45.5% | 44.9% |
出典 文部科学省「令和7年度通信制高等学校実態調査に関する調査結果について」(調査時点 令和7年5月1日)。確認日2026年9月20日。
スクールソーシャルワーカーは、家庭の状況や福祉制度との橋渡しを担う専門職です。配置は公立91.4%に対して私立19.4%と差が大きくなっています。教員の専任率も公立が68.9%と高く、継続して同じ担当者が見てくれる可能性は公立のほうが高い構造です。公立と私立の違い全般は公立と私立の通信制高校はどっちがいいかにまとめました。
学校選びで聞く6項目
説明会・個別相談で確認すること
- 通級による指導を実施しているか。実施していない場合、他校通級や巡回通級の調整ができるか
- 特別支援教育コーディネーターを置いているか、誰が担当か
- スクールカウンセラーが来校する日数(週何日か、予約は必要か、オンライン相談は可能か)
- 入学前に中学校からの情報提供・引き継ぎを受け入れているか(令和4年度は通級の利用を検討した3,581人のうち2,366人が引き継ぎを受けている)
- レポートの提出方法や締切の扱いに個別の配慮ができるか、その相談先はどこか
- スクーリングで人数の多い場所が負担になる場合、別室や少人数での受講の相談ができるか
1つ目と2つ目は、パンフレットにはまず書かれていません。通級を実施している高校は公立でも10.7%なので、「ある」という前提で探すと候補がなくなります。実施していない学校でも、校内の配慮でどこまで対応できるかを具体的に聞くほうが現実的です。聞くべき項目の整理は通信制高校の資料請求はどこからも参考にしてください。
入学前に相談できる窓口
- 在籍中学校の特別支援教育コーディネーター 高校への情報提供・引き継ぎの窓口になります。令和4年度の調査では、通級の利用を検討した3,581人のうち2,366人について中学校からの情報提供や引き継ぎが行われていました
- 都道府県・市区町村の教育相談窓口 進学先の選択そのものについて相談できます
- 教育支援センター(旧・適応指導教室) 市区町村の教育委員会などが設置する公的な施設です。仕組みはフリースクールとはで整理しています
- 志望校の個別相談 多くの通信制高校が個別相談・学校見学を受け付けています。上の6項目はここで聞きます
よくある質問
通信制高校でも通級による指導は受けられますか
制度上は可能で、令和4年度には通信制課程で118人(公立89人・私立29人)が受けています。ただし全日制1,081人・定時制856人と比べると少なく、実施している学校は限られます。志望校が実施しているかは個別に確認が必要です。
通級による指導を受けるには診断が必要ですか
学校教育法施行規則第140条は、対象を8つの区分(言語障害者、自閉症者、情緒障害者、弱視者、難聴者、学習障害者、注意欠陥多動性障害者、その他障害のある者で特別の教育課程による教育を行うことが適当なもの)と定め、「当該障害に応じた特別の指導を行う必要があるもの」としています。実際の判断の進め方は学校や自治体によって異なるため、在籍校または志望校に確認してください。この記事で医学的な判断の要否を述べることはできません。
必要と判断されても受けられないことがあるのですか
令和4年度は、必要と判断された2,915人のうち実際に指導を受けたのは2,055人でした。差の860人について学校が挙げた理由で最も多かったのは「本人や保護者が希望しなかったため」(650人)です。担当教員の加配がつかなかったケースは24人、校内の理解が得られなかったケースは26人でした。
通級を実施している高校はどのくらいありますか
令和4年度時点で、公立高校のうち通級による指導を受けている生徒が在籍する学校は372校、公立高校全体の10.7%です。私立を含めた学校数の全国集計はこの調査では確認できませんでした。
支援が必要な生徒はどのくらい在籍していますか
文部科学省の委託調査では、「特別な支援を必要とする生徒」の在籍割合は通信制で各校平均1割弱、人数ベースでは広域通信制15.7%でした。定時制は16.0%、昼間定時制は25.7%と全課程で最も高くなっています。
中学校からの引き継ぎはしてもらえますか
令和4年度に高校で通級の利用を検討した3,581人のうち、2,366人について中学校からの情報提供や引き継ぎ、あるいは高校から中学校への情報聴取が行われていました。在籍中学校の特別支援教育コーディネーターが窓口になることが多いため、進学先を決める段階で相談しておくと進めやすくなります。
スクールカウンセラーにはどの学校でも相談できますか
相談できる体制を整えている通信制高校は全体の84.5%です。設置者別では公立98.8%、私立79.7%、株式会社立80.0%でした。来校日数や予約方法は学校によって異なるため、個別相談で確認してください。
定時制と通信制のどちらが支援を受けやすいですか
通級による指導の実績では定時制856人・通信制118人と差があります。一方で通信制は登校頻度を選べる幅が広く、どちらが合うかは必要な支援の内容と通学の負担のどちらを優先するかで変わります。課程ごとの違いは通信制高校と定時制高校はどっちが向いているかで比較しています。
スクーリングの配慮は相談できますか
対応は学校によって異なり、全国的な統計はありません。スクーリングの日数や形式そのものが学校で大きく違うため、まず通信制高校のスクーリングは何日かで日数の実態を確認したうえで、個別相談で配慮の可否を聞くのが確実です。
まとめ
この記事の要点
- 高校の通級による指導は平成30年度に制度化され、令和4年度の利用者は全国で2,055人
- 課程別では全日制1,081人・定時制856人・通信制118人。通信制で実施している学校は限られる
- 必要と判断された2,915人のうち860人は実際には受けておらず、最多の理由は「本人や保護者が希望しなかったため」
- 公立高校で通級を実施しているのは372校・10.7%。「ある」前提で探すと候補がなくなる
- 通級の有無だけでなく、特別支援教育コーディネーターの配置とスクールカウンセラーの来校日数を合わせて聞く
- 中学校からの引き継ぎは実際に行われている(検討3,581人中2,366人)。進学先を決める段階で在籍校に相談しておく
数字が示しているのは、制度はあるが実施している学校は多くない、という現状です。だからこそ、パンフレットの「一人ひとりに寄り添う」といった表現ではなく、通級の実施状況・担当者の有無・相談できる日数という具体的な条件で聞いていくほうが、学校ごとの差がはっきり出ます。進路全体の整理は不登校の子が高校に進むときの選択肢を参照してください。
出典一覧
文部科学省「令和4年度 通級による指導 実施状況調査結果」(2024年11月公表、国公私立の小・中・高等学校が対象)
文部科学省「令和7年度通信制高等学校実態調査に関する調査結果について」(2026年4月21日公表、調査時点 令和7年5月1日)
文部科学省委託「高等学校における教育の質確保への対応のための調査研究、高等学校の現状に係る調査・分析に係る調査研究」調査報告書(令和5年度)
学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)第140条・第141条
いずれも2026年9月20日に確認。