通信制高校を調べ始めると、まず目に入るのは私立の広域通信制高校です。資料請求サイトにも検索結果にも私立が並びます。ところが実際には、通信制課程を置く高校323校のうち81校が公立で、学費は年間数千円から1万円台という水準です。それでも「公立の通信制」が候補に挙がりにくいのは、住んでいる地域でしか選べないという構造的な制約があるためです。この記事では、文部科学省の令和7年度通信制高等学校実態調査と学校基本調査の数値をもとに、公立と私立の違いを学費・入学条件・サポート体制・続けやすさの4点から比較します。
この記事で分かること
- 通信制課程を置く高校は全国323校。内訳は公立81校・私立227校・株式会社立15校
- 学費は公立が圧倒的に安いが、私立も2026年4月の就学支援金改正で授業料部分はほぼ埋まる
- 公立81校のうち79校が狭域(その都道府県の在住者・在勤者しか入れない)
- スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置は公立のほうが手厚い
- 一方、週5日通えるコースを持つのは公立81校中わずか1校。通学スタイルの選択肢は私立が圧倒的

この記事の比較の基準
学校ごとのパンフレットや口コミの評判ではなく、全国の通信制高校を同じ設問で調べた国の調査の数値だけを比較の材料にしています。具体的には、文部科学省が通信制課程を置く高校323校すべてを対象に実施した令和7年度通信制高等学校実態調査、学校基本調査(令和7年度)、就学支援金の制度資料、東京都・神奈川県の公表資料の4種類です。学費については制度上の金額(条例で定める授業料と就学支援金の支給限度額)を基準にし、学校ごとに金額が違う教材費・行事費は目安として扱います。
この記事の数値は設置者ごとの全国的な傾向です。同じ公立でも都道府県によって授業料・選抜方法・スクーリングの形は異なり、同じ私立でも学校ごとに差があります。志望校を決める段階では、必ずその学校の募集要項で個別の条件を確認してください。
公立と私立はそもそも何校ずつあるのか
文部科学省が2026年4月に公表した「令和7年度通信制高等学校実態調査に関する調査結果」によれば、令和7年5月1日時点で通信制課程を置く高校は全国に323校あります。設置者の内訳は次のとおりです。
| 設置者 | 学校数 | 割合 | うち広域 | うち狭域 |
|---|---|---|---|---|
| 公立 | 81校 | 25.1% | 2校(2.5%) | 79校(97.5%) |
| 私立 | 227校 | 70.3% | 116校(51.1%) | 111校(48.9%) |
| 株式会社立 | 15校 | 4.6% | 15校(100%) | 0校 |
| 全体 | 323校 | 100% | 133校(41.2%) | 190校(58.8%) |
出典 文部科学省「令和7年度通信制高等学校実態調査に関する調査結果について」(調査時点 令和7年5月1日、2026年4月21日公表)。確認日2026年9月20日。
「広域」とは、学校が所在する都道府県を含めて3つ以上の都道府県から生徒を受け入れられる通信制高校のことです。公立で広域なのは81校中2校だけで、残る79校は狭域、つまり原則としてその都道府県に住んでいる人しか入学できません。ネット検索で全国どこからでも出願できる学校ばかりが出てくるのは、広域の大半が私立と株式会社立だからです。入学できる地域の考え方は広域通信制でも全国から入れるとは限らないで詳しく整理しています。
学費はどれくらい違うのか
公立の授業料は1単位336円が目安
公立高校の授業料は各都道府県の条例で決まります。東京都の場合、通信制課程の授業料は1単位あたり336円、入学料500円、入学考査料950円です(令和7年4月1日現在)。都立で通信制課程を置くのは一橋高校・新宿山吹高校・砂川高校の3校で、学費の内訳やスクーリングの曜日、入試日程は各校の記事で公式情報をもとに整理しています。神奈川県立の場合は厚木清南高等学校が1単位350円、横浜修悠館高等学校が平日講座1単位700円・日曜講座1単位350円という設定です。
| 項目 | 東京都立(一橋・新宿山吹・砂川) | 私立の広域通信制の例(N高等学校ネットコース) |
|---|---|---|
| 入学考査料 | 950円 | 10,000円(出願時) |
| 入学料・入学金 | 500円 | 10,000円 |
| 授業料 | 1単位336円(25単位で8,400円) | 1単位12,000円(普通科) |
| 施設設備費など | その他必要経費1,200円程度(一橋高校の案内。入学料・生徒会費・共済掛金など) | 施設設備費50,000円・教育関連諸費13,000円(年額) |
| 教科書・学習書 | 2〜3万円程度(一橋高校の案内。砂川高校は金額の公表なし) | コースにより別途 |
出典 東京都教育委員会「都立高等学校、中等教育学校(後期課程)の授業料・入学料」(令和7年4月1日現在)、N高等学校2027年度生徒募集要項、東京都立一橋高等学校「学費・諸経費・補助制度」。確認日2026年9月20日(一橋高校の案内は2026年10月16日)。公立側の教科書代・諸会費は学校により異なるため、本サイトで確認できた範囲の目安。
2026年4月の就学支援金改正で何が変わったか
2026年(令和8年)4月、高等学校等就学支援金の所得制限が撤廃されました。旧制度では世帯年収によって支給の有無や額が分かれていましたが、新制度では所得にかかわらず私立通信制で年額337,200円が上限になりました。支給限度額は次のとおりです。
| 区分 | 公立(定額授業料) | 公立(単位制授業料) | 私立(定額授業料) | 私立(単位制授業料) |
|---|---|---|---|---|
| 高等学校 全日制 | 9,900円/月 | 4,812円/単位 | 38,100円/月 | 18,528円/単位 |
| 高等学校 定時制 | 2,700円/月 | 1,740円/単位 | 38,100円/月 | 18,528円/単位 |
| 高等学校 通信制 | 520円/月 | 336円/単位 | 28,100円/月 | 13,668円/単位 |
| 支給期間の上限 | 48月(通信制・定時制) | 48月(通信制・定時制) | ||
出典 文部科学省「令和8年度高等学校等就学支援金制度等に関する都道府県担当者等説明会」資料(令和8年4月8日、初等中等教育局高等学校振興課高校修学支援室)。単位制の支給は通算74単位・年間30単位まで。確認日2026年9月20日。
ここで注目したいのは、公立通信制の単位あたり支給額336円が、東京都立の授業料336円と完全に一致している点です。就学支援金の受給が認められれば、公立通信制の授業料そのものは実質的に負担ゼロになります。残るのは入学料500円・入学考査料950円と、教科書代・諸会費といった支援金の対象外の実費だけです。
私立の場合、単位制の支給額13,668円は多くの広域通信制高校の授業料単価(1単位8,000〜12,000円が中心)を上回ります。つまり授業料の部分だけを見れば、私立でも就学支援金でほぼ埋まる計算になります。差が出るのは施設設備費・教育関連諸費・行事費といった支援金の対象外の費用と、通学コースやサポート校の費用です。金額の詳細は通信制高校の学費は結局いくらかと通信制高校の学費を地域別に比較にまとめています。
公立の年額上限が6,240円と小さいのは支援が薄いからではなく、そもそも公立の授業料自体が年間1万円前後しかないためです。「公立は就学支援金の金額が少ない」という言い方は誤解を招きます。
入学できる人の範囲が違う
学費の次に効いてくるのが、そもそも出願できるかどうかです。東京都立高等学校通信制課程入学者選抜実施要綱では、応募資格は定時制課程に準じるとされ、定時制の応募資格は「都内に住所又は勤務先を有し、入学後も引き続き都内に住所又は勤務先を有することが確実な者」と定められています。加えて「当該都立高校が実施する面接指導(スクーリング)に対応(出席)可能な者」という条件が付きます。
つまり公立を選ぶ場合、住んでいる都道府県にどんな学校があるかで選択肢が最初から決まります。隣県の公立通信制が良さそうでも、そこに勤務先がなければ出願できません。一方、私立の広域通信制116校と株式会社立15校は複数の都道府県から生徒を受け入れているため、住所による制約は小さくなります。ただし広域であっても受け入れ対象地域は学校ごとに決まっているので、出願前の確認は必要です。
入学者選抜の方法にも差がある
「通信制は誰でも入れる」と言われることがありますが、実態調査の数字を見るとそうとは限りません。入学者選抜の方法別の学校数は次のようになっています(1校が複数の方法を実施している場合があるため、合計は学校数と一致しません)。
| 選抜の方法 | 公立(81校中) | 私立(227校中) | 株式会社立(15校中) |
|---|---|---|---|
| 学力検査問題による検査 | 15校 | 72校 | 4校 |
| 面接による検査 | 67校 | 216校 | 13校 |
| 小論文又は作文による検査 | 33校 | 114校 | 7校 |
| 調査書等の書類による選考 | 56校 | 163校 | 11校 |
| その他 | 4校 | 12校 | 0校 |
出典 文部科学省「令和7年度通信制高等学校実態調査に関する調査結果について」。確認日2026年9月20日。
実際、東京都立の通信制課程は国語・数学・外国語(英語)を総合した学力検査を実施します。第1学年相当で新宿山吹高校は70分、一橋高校と砂川高校は60分です。対して神奈川県立の2校は作文と面接で選考します。同じ公立でも都道府県によって選抜方法は違うので、「公立だから学力試験がない」とは言えません。私立でも72校が学力検査を実施しており、学力検査の有無は公立か私立かでは決まらないと考えたほうが正確です。
通学スタイルの選択肢は私立が圧倒的に多い
ここが公立と私立の最も大きな違いです。通学頻度別のコースを開設している学校数を見ると、差がはっきり出ます。
| コースの種類 | 公立(81校中) | 私立(227校中) | 公立の在籍生徒数 | 私立の在籍生徒数 |
|---|---|---|---|---|
| 週5日通学 | 1校 | 82校 | 333人 | 36,099人 |
| 週3日通学 | 2校 | 56校 | 1,458人 | 18,201人 |
| 週1日通学 | 39校 | 82校 | 19,197人 | 17,213人 |
| 集中スクーリング前提 | 1校 | 98校 | 19人 | 68,578人 |
| その他(月1〜2回など) | 39校 | 82校 | 35,397人 | 60,949人 |
出典 文部科学省「令和7年度通信制高等学校実態調査に関する調査結果について」。コースには正規の教育課程ではない教育活動のために開設するコースも含む。確認日2026年9月20日。
週5日通えるコースを持つ公立は81校中1校だけで、在籍者も333人。私立は82校・36,099人です。同じように、年に数回まとめて通う集中スクーリング型のコースも、公立は1校19人に対して私立は98校68,578人と桁が違います。公立の通信制はいまも「週1日の登校と自宅学習」という従来型が中心で、毎日通いたい人にも、逆に年数回だけ集中して通いたい人にも、公立では選択肢がほとんどありません。スクーリングの回数や日数の実態は通信制高校のスクーリングは何日かに学校別の調査結果があります。
「私立のほうが面倒見がいい」は本当か
通信制高校の比較でよく見かけるのが「公立は安いがサポートが薄い、私立は高いが面倒見がいい」という説明です。実態調査の数字を当てはめると、この説明は半分しか当たっていません。
| 項目 | 公立 | 私立 | 株式会社立 |
|---|---|---|---|
| スクールカウンセラーに相談できる体制がある | 98.8%(80/81校) | 79.7%(181/227校) | 80.0%(12/15校) |
| スクールソーシャルワーカーに相談できる体制がある | 91.4%(74/81校) | 19.4%(44/227校) | 40.0%(6/15校) |
| 教員のうち専任(その通信制課程のみの勤務)の割合 | 68.9% | 40.1% | 45.5% |
| 教員の主な勤務場所が当該校の通信制課程 | 65.7% | 27.5% | — |
出典 文部科学省「令和7年度通信制高等学校実態調査に関する調査結果について」。体制の有無は令和7年5月1日時点。確認日2026年9月20日。
専門職の配置という意味では、公立のほうが整っています。とくにスクールソーシャルワーカー(家庭の経済状況や福祉制度との橋渡しを担う専門職)は、公立の91.4%に対して私立は19.4%と大きな開きがあります。教員も、公立は68.9%が専任で、その通信制課程だけを担当しています。私立は59.9%が兼任で、主な勤務場所も「連携する面接指導等実施施設」が54.8%と最も多くなっています。
では「私立のほうが面倒見がいい」というのは何を指しているのかというと、前の節で見た通学コースの豊富さと、キャンパスに通えば毎日誰かに会える環境のことだと考えるのが実態に近いと思われます。専門職の相談体制と、日々の居場所づくりは別の話です。どちらが必要かは家庭ごとに違うので、資料請求や説明会では「相談できる専門職がいるか」と「週に何日通えるか」を分けて聞くのが確実です。資料請求で確認すべき項目は通信制高校の資料請求はどこからに整理しています。
続けられるかどうかを数字で見る
令和7年度学校基本調査(令和7年5月1日現在)の通信制課程・本科のデータから、在籍生徒数と前年度間の退学者数を設置者別に取り出して計算すると、次のようになります。
| 区分 | 生徒数(本科) | 前年度間の入学者 | 前年度間の退学者 | 生徒数に対する退学者の割合 |
|---|---|---|---|---|
| 公立 | 62,008人 | 15,758人 | 4,704人 | 7.6% |
| 私立 | 243,189人 | 103,941人 | 9,598人 | 3.9% |
| 全体 | 305,197人 | 119,699人 | 14,302人 | 4.7% |
出典 文部科学省「学校基本調査 令和7年度」表160・表161(本科、令和7年12月26日確定値公表)をもとに当サイトで計算。割合は退学者数を生徒数で割った単純計算であり、文部科学省が公表している指標ではない。確認日2026年9月20日。
公立の退学者の割合は私立のおよそ2倍です。ただしこれを「公立は続かない」と読むのは早計で、背景の違いを踏まえる必要があります。公立には修業年限4年以上の課程を置く学校があり(公立81校中4校が修業年限4年、私立は227校すべてが3年)、働きながら学ぶ生徒や、年齢の高い生徒も多く在籍しています。私立と比べて在籍者の事情の幅が広い分、途中で進路を変える人も出やすい構造です。
もう1つ、実態調査には「令和6年度間に添削課題の提出はあるが、面接指導に1日も来ていない生徒」という数字があります。公立は在籍58,363人中2,478人(4.2%)、私立は220,125人中5,060人(2.3%)でした。この生徒たちについて学校が挙げた理由で最も多かったのは「心身に関すること(体調不良、不安・抑うつ、朝起きられない、入院・療養等)」で、161校が該当する生徒がいると回答しています。レポートは出せてもスクーリングに来られないという状態は、公立・私立を問わず一定数起きているということです。卒業要件のつまずき方は通信制高校で卒業できない理由にまとめています。
結局どちらを選べばいいか
ここまでの比較を、判断の軸ごとに整理します。なお、通信制そのものが自分に合うかを迷っている段階なら、通信制高校と定時制高校はどっちが向いているかで課程ごとの違いを先に確認してください。
公立が向いている場合
- 学費をできるだけ抑えたい(授業料は就学支援金で実質ゼロになる自治体が多い)
- 週1日程度の登校と自宅学習という従来型のペースで問題ない
- スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーに相談できる体制を重視する
- 働きながら通いたい、あるいは4年かけて卒業する前提で考えている
- 住んでいる都道府県に通える公立通信制がある
私立が向いている場合
- 週3日・週5日など、通学の頻度を自分で選びたい
- 年に数回の集中スクーリングで済ませ、残りはオンラインで進めたい
- 住んでいる都道府県に選択肢がない、または引っ越しの可能性がある
- 大学進学に向けた指導や、専門分野の授業を学校側に用意してほしい
- 入学時期を4月に限定せず、年度の途中から始めたい
公立は年に1回の一斉募集が基本で、東京都立の場合は4月上旬に出願・学力検査・合格発表・入学手続まで進みます。これに対して私立の広域通信制は年に複数回の出願期間を設けている学校が多く、転入・編入も随時受け付けています。今の学校を辞めるかどうか迷っている段階なら、いつ動けるかという時期の違いは学費以上に効いてきます。転入・編入のタイミングは通信制高校の転入・編入はいつできるかで確認してください。
よくある失敗と注意点
- 公立の学費だけ見て決めてしまう 授業料は安くても、通える範囲に本校があるか、スクーリングの曜日が生活と合うかを先に確認する必要があります。東京都立の応募資格には「面接指導(スクーリング)に対応(出席)可能な者」と明記されています
- 私立の学費を授業料だけで比べてしまう 就学支援金の対象は授業料です。施設設備費・教育関連諸費・行事費・通学コースの追加費用は対象外なので、総額で比べないと差が見えません
- サポート校の費用を学費に含め忘れる 私立通信制に在籍しながらサポート校に通う場合、サポート校の費用は就学支援金の対象外です。仕組みの違いはフリースクールとはで解説しています
- 出願時期を逃す 公立は年1回の募集が基本です。都道府県によって日程が異なるため、教育委員会のサイトで実施要綱を確認してください
- 旧制度の年収基準で判断してしまう 「年収590万円未満」「910万円未満」という区分は2026年3月までの制度です。2026年4月以降は所得制限がありません
公立と私立の通信制高校に関するよくある質問
公立の通信制高校は全国に何校ありますか
令和7年5月1日時点で81校です。通信制課程を置く高校323校のうち25.1%にあたります。このうち複数の都道府県から生徒を受け入れられる広域は2校のみで、残る79校は狭域です(文部科学省 令和7年度通信制高等学校実態調査)。
公立の通信制高校は他県から入学できますか
原則できません。たとえば東京都立の通信制課程の応募資格は「都内に住所又は勤務先を有し、入学後も引き続き都内に住所又は勤務先を有することが確実な者」と定められています。勤務先が都内にあれば住所が都外でも出願できる形ですが、条件は都道府県ごとに異なるため、志望校の実施要綱で確認してください。
公立と私立で学費はどれくらい違いますか
授業料の単価で比べると、東京都立は1単位336円、私立の広域通信制は1単位8,000〜12,000円程度が中心です。ただし2026年4月以降は就学支援金が私立通信制で1単位13,668円(年額上限337,200円)まで支給されるため、授業料部分の実質負担の差は縮まります。差が残るのは施設設備費・教育関連諸費など支援金の対象外の費用です。
公立の通信制高校に入学試験はありますか
都道府県によります。公立81校のうち15校が学力検査を実施しており、東京都立の3校(一橋・新宿山吹・砂川)は国語・数学・外国語を総合した60〜70分の学力検査を行います。神奈川県立の2校は作文と面接での選考です。面接を実施する公立は67校、作文・小論文は33校でした。
毎日通える通信制高校を探しています。公立にもありますか
週5日通学のコースを開設している公立は81校中1校のみで、在籍者は333人です。私立は82校・36,099人が在籍しています。毎日通える環境を重視するなら、私立の通学コースを中心に探すほうが選択肢が多くなります。
サポート体制は私立のほうが手厚いのですか
専門職の配置という点では公立のほうが整っています。スクールカウンセラーに相談できる体制がある学校は公立98.8%・私立79.7%、スクールソーシャルワーカーは公立91.4%・私立19.4%です。教員の専任率も公立68.9%に対して私立40.1%でした。一方、通学できる日数の多さや学校行事の豊富さは私立に分があり、「手厚さ」の中身が異なると考えるのが実態に近いです。
公立のほうが退学する人が多いというのは本当ですか
令和7年度学校基本調査の数値では、前年度間の退学者を生徒数で割ると公立7.6%・私立3.9%となります。ただしこれは当サイトによる単純計算で、公立には修業年限4年以上の課程や働きながら学ぶ生徒が多く含まれるなど、在籍者の構成が私立と異なる点を踏まえる必要があります。設置者の違いだけで続けやすさが決まるとは言えません。
公立と私立で卒業の条件は変わりますか
変わりません。74単位以上の修得、3年以上の在籍、特別活動30時間以上という卒業要件は学習指導要領に基づくもので、設置者を問わず共通です。卒業後に得られる高校卒業資格も同じものです。
公立の通信制から大学に進学できますか
できます。卒業すれば全日制と同じ高校卒業資格が得られるため、大学受験資格に違いはありません。ただし進学に向けた補習や受験指導をどこまで学校が用意しているかは学校ごとに差があります。進学支援の形は通信制高校から大学へ進めるかの記事で4つの型に整理しています。
この記事の調べ方と確認日
この記事は、通信制課程を置く高校323校(公立81校・私立227校・株式会社立15校)を、文部科学省の実態調査と学校基本調査の数値で設置者別に比べています。比較した項目は、学校数と広域・狭域、学費、入学者選抜の方法、通学コース、相談体制と教員の専任率、退学者の割合です。退学者の割合は、学校基本調査の数値を当サイトが単純計算したもので、国の公表指標ではありません。
確認日は2026年9月26日です。文部科学省の実態調査結果(学校数、広域・狭域、修業年限、相談体制、通学コース、選抜方法、専任率、面接指導に1日も来ていない生徒数)は、公表資料の原本で確認しました。東京都立の授業料1単位336円と入学料500円、私立通信制の就学支援金(年額337,200円、1単位13,668円)も、東京都の公式ページで確認しました。
今回の確認で原本に当たれなかった項目は次のとおりです。学校基本調査の退学者数と生徒数、文部科学省の就学支援金説明会資料の全区分の金額、東京都立通信制課程の入学者選抜実施要綱(通信制課程分)の応募資格と学力検査の時間、神奈川県立2校とN高等学校の学費です。これらは「確認できず」として、本文の数字は前回確認時点のものとしています。東京都の応募資格の文言は、都立高校の入学者選抜実施要綱(令和7年度版)で確認できた範囲に限ります。
制度は年度で変わるため、出願前には志望校の募集要項と、都道府県教育委員会や文部科学省の最新の公式ページで確認してください。就学支援金の受給が認められるかどうかは、制度に基づく認定で決まります。
- 文部科学省 高等学校通信教育の質の確保・向上(令和7年度通信制高等学校実態調査の掲載ページ)
- 文部科学省 令和7年度通信制高等学校実態調査に関する調査結果について(PDF)
- 東京都教育委員会 都立高等学校、中等教育学校(後期課程)の授業料・入学料及び特別支援学校高等部の授業料について
- 東京都生活文化局 高等学校等就学支援金(私立高等学校等)について
- 東京都教育委員会 東京都立高等学校入学者選抜実施要綱(令和7年度)
まとめ
この記事の要点
- 通信制課程を置く高校323校のうち公立は81校。そのうち79校は狭域で、住んでいる都道府県でしか選べない
- 公立の授業料は1単位336円前後で、就学支援金を受ければ実質ゼロになる自治体が多い
- 2026年4月の所得制限撤廃により、私立通信制も授業料部分は就学支援金でほぼ埋まる。差が出るのは支援金の対象外の費用
- 週5日通学や集中スクーリングなど、通学スタイルの選択肢は私立が圧倒的に多い
- スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置と教員の専任率は公立のほうが高い
- 公立は年1回の募集が基本。私立は年に複数回の出願機会と随時の転入・編入がある
学費の安さだけで公立、通いやすさだけで私立、と決めるとあとで合わなくなります。まず住んでいる都道府県の公立通信制を調べ、そのスクーリングの曜日と選抜方法が生活に合うかを確認し、合わなければ私立の広域通信制に広げるという順番で見ていくと、候補を絞りやすくなります。「やめとけ」と言われる理由を公式情報で検証したこちらの記事も、判断材料として合わせて読んでみてください。
出典一覧
文部科学省「令和7年度通信制高等学校実態調査に関する調査結果について」(2026年4月21日公表、調査時点 令和7年5月1日)
文部科学省「学校基本調査 令和7年度」表160・表161(2025年12月26日確定値公表)
文部科学省「令和8年度高等学校等就学支援金制度等に関する都道府県担当者等説明会」資料(2026年4月8日)
東京都教育委員会「都立高等学校、中等教育学校(後期課程)の授業料・入学料及び特別支援学校高等部の授業料について」(令和7年4月1日現在)
東京都教育委員会「東京都立高等学校通信制課程入学者選抜実施要綱」「東京都立高等学校入学者選抜実施要綱」
いずれも2026年9月20日に確認。