通信制高校の学費は、パンフレットの数字をそのまま足しても総額になりません。単位数によって変わる授業料、年度ごとにかかる固定費、スクーリングの交通費や宿泊費、サポート校を併用する場合の上乗せ。この4つが別々に書かれているため、比べているつもりで比べられていないことが起きます。
さらに2026年度から、高等学校等就学支援金の制度が大きく変わりました。所得制限が撤廃され、支給の上限額も引き上げられています。ただし、令和8年3月31日以前から在籍している在校生には経過措置があり、所得に応じて旧制度と同等の水準の支援になる場合があります。この記事では、学費の内訳を4つに分解したうえで、新しい支援金制度を踏まえた実質負担の考え方を整理します。
先に結論
- 学費は「入学時にかかるもの」「毎年かかるもの」「スクーリング関連」「サポート校」の4つに分けて考える
- 2026年4月から就学支援金の所得制限が撤廃された。これから入学する人は世帯年収による線引きがない一方、令和8年3月31日以前からの在校生は経過措置で旧制度と同等の支援になる場合がある
- 申請した月から支給が始まるのが原則なので、入学手続きと同時に提出期日を確認する
- 私立高校(全日制)の支給上限は月額38,100円、年額457,200円。私立の通信制は最大で月額28,100円
- 単位制の学校は支給額の計算が別なので、必ず学校に確認する
- 総額を見誤る原因は、単位数・年度ごとの固定費・サポート校の3つ

学費を4つに分解する
| 分類 | 含まれるもの | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 入学時にかかるもの | 出願料(選考料)、入学金、施設設備費 | 出願料が入学金と別に必要な学校がある |
| 毎年かかるもの | 授業料(単位数×単価)、教育充実費、施設費、諸経費 | 授業料以外の固定費が年10万円を超える学校もある |
| スクーリング関連 | 交通費、宿泊費、行事費 | 本校が遠方だと1回の集中スクーリングで数万円かかる |
| サポート校・学習センター | サポート校の授業料、施設費 | 通信制高校の学費とは完全に別建て |
パンフレットに大きく載っているのは、たいてい2番目の授業料だけです。比較するときは、この4つを同じ形式で書き出してから並べてください。形式が揃っていない資料をそのまま比べても、判断の材料にはなりません。
2026年度から就学支援金の制度が変わった
高等学校等就学支援金は、授業料に充てるために国から支給される返済不要のお金です。学校が代わりに受け取って授業料と相殺する仕組みなので、家庭に現金が振り込まれるわけではありません。
2026年(令和8年)4月から、この制度の所得制限が撤廃されました。これまで世帯の収入によって支給の可否や加算の有無が決まっていましたが、新しく入学する人についてはその線引きがなくなっています。一方で、令和8年3月31日以前から在籍している在校生は、経過措置によって所得に応じた旧制度と同等の水準の支援を受ける形になっています。同じ学校の同じ学年でも、入学した時期によって扱いが分かれることがある点は覚えておいてください。
| 区分 | 支給上限額 |
|---|---|
| 私立高校(全日制) | 月額38,100円(年額457,200円) |
| 公立高校(全日制) | 月額9,900円 |
| 公立高校(定時制) | 月額2,700円 |
| 公立高校(通信制) | 月額520円 |
| 私立高校(通信制) | 最大で月額28,100円(12か月で337,200円) |
| 高等専門学校(国公立) | 月額19,550円 |
| 高等専門学校(私立) | 最大で月額38,100円 |
注意点が2つあります。1つは、単位制ごとに授業料が設定される課程に在学する場合、支給額の計算が上の表と異なることです。通信制高校の多くは単位制なので、実際にいくら支給されるかは必ず在学予定の学校に確認してください。もう1つは、支援金は授業料に充てるものであり、入学金・施設費・教材費などは対象外だということです。「無償化」という言葉から受ける印象と、実際に払う金額には差が出ます。
改正前の情報に注意する
2025年度以前は、世帯年収の目安によって支給額や私立加算の有無が変わる仕組みでした。年収590万円未満、910万円未満といった数字が説明に出てくる資料は、この改正前の制度を前提にしています。ただし、令和8年3月31日以前から在籍している在校生は経過措置で旧制度と同等の水準の支援を受けることになるため、在校生の家庭にとっては旧制度の所得区分がまったく無関係になったわけではありません。
学校が公開している募集要項も、作成年度によって記載が異なります。「就学支援金適用後の学費」として書かれた金額を見るときは、それが何年度の制度を前提にしたものかを確認してください。当サイトの学校別記事も、各校が公開している募集要項の年度の記載をそのまま引いているため、同じ注意が必要です。
支給期間と休学のときの扱い
支給される期間にも上限があります。全日制の標準である36月までが原則ですが、定時制・通信制の課程は原則48月まで支給されます。通信制は自分のペースで履修を組めるぶん、卒業までの期間が延びることもあるので、この上限は入学前から頭に入れておいたほうが安心だと思います。
体調などで休学する場合、休学中に授業料が徴収されないのであれば、学校に「支給停止の申出」を出して支給を止めることができます。申出をしないと休学中の期間も支給額0円として数えられ、復学後に残る支給期間は休学した期間を差し引いたものになります。休学を考え始めた段階で、学校にこの手続きを確認しておくと支給期間を無駄にせずに済みます。
単位制の学校は「1単位いくら」で総額が決まる
通信制高校の授業料は、履修する単位数に単価を掛けて計算する学校がほとんどです。中央国際高等学校のように「入学金50,000円+教育運営費年間30,000円+授業料1単位15,000円×履修単位数」と内訳を明示している学校もあれば、コース料金として一括で示す学校もあります。
卒業には74単位以上が必要で、年間に履修できる単位数には上限(年間30単位程度)が設けられていることが多いため、3年間で毎年25単位前後を履修するのが標準的な形になります。単価が1単位あたり3,000円違えば、74単位で222,000円の差になります。単価は総額に効いてくる数字です。
実際の学校の学費を並べてみる
当サイトで確認した学校の金額を、公開されている形のまま並べます。条件(コース・単位数・年度・支援金の前提)が学校ごとに違うため、単純な優劣の比較には使えません。幅を知るための資料として見てください。
| 学校 | 公開されている金額 |
|---|---|
| 翔洋学園高等学校 | 入学金0円+施設使用料年36,000円+授業料1単位年12,000円。26単位・支援金適用時の実質納入額36,000円 |
| N高等学校 | ネットコースは支援金の先引きで3年間の実質負担額199,000円 |
| 鹿島学園高等学校 | 本校籍のみで3年間219,756円(別途、学習センターの費用) |
| 駿台甲府高等学校 | 74単位・3年間の学費モデルは支援金適用後290,000円(入学金・教育充実費・授業料の合計。教材費は別途) |
| あずさ第一高等学校 | 初年度納入額93,168円(フリースタイル)〜345,968円(5日制) |
| 飛鳥未来高等学校 | 支援金適用後の年間 ベーシック225,000円〜3DAY・5DAY405,000円(単位履修料は支援金で全額) |
| 屋久島おおぞら高等学校 | 授業料1単位15,000円。サポート校のおおぞら高等学院側に基礎コース年396,000円・個別指導コース580,800円 |
| 東海大学付属望星高等学校 | 1年次生の校納金は年159,800円(就学支援金の支給見込額を差し引いた後。支援金の対象外の場合は入学時に275,000円)。2年次以降は公式の表で要確認 |
この幅を見て分かるのは、同じ「通信制高校」でも、学校やコースによって負担額に大きな差があるということです。差を生むのは主にコースの通学頻度と、専門分野の授業の有無です。表には年額で示している学校と3年間の合計で示している学校があり、就学支援金を引いた後の額かどうかも学校ごとに違います。比べるときは、年額か3年間の合計か、支援金を引いた後かどうかをそろえてから見てください。金額が小さい学校ほど魅力的に見えますが、サポート校の費用など表に出ていない分まで確かめておくと、入学後に慌てずに済むはずです。学校別の詳細は通信制高校の学費を都道府県別に比較にまとめています。
サポート校を併用する場合は2階建て
サポート校は通信制高校ではないため、学費は完全に別建てです。トライ式高等学院のようにサポート校側の費用を公式サイトで公開していない学校もあれば、おおぞら高等学院(旧KTCおおぞら高等学院)のように募集要項に基礎コース年396,000円などと載せている学校もあります。載っていない場合は資料請求や個別相談で確認してください。
就学支援金の対象になるのは通信制高校の授業料であって、サポート校の費用は対象外です。「支援金があるから安く済む」と考えていると、サポート校の費用でその想定が崩れます。
総額を見誤りやすい3つのパターン
1 単位数を数えていない。「1単位12,000円」と書かれていても、年に何単位履修するかで金額は倍以上変わります。25単位なら年30万円です。
2 年度ごとの固定費を1年分だけで計算している。教育充実費や施設費は毎年かかります。3年分で計算してください。
3 スクーリングの交通費・宿泊費を計算に入れていない。本校が遠方にある学校では、集中スクーリングのたびに交通費と宿泊費がかかります。年1回4泊5日という形をとる学校もあります。
自治体の助成も確認する
国の就学支援金とは別に、都道府県が独自の授業料助成を設けている場合があります。たとえば科学技術学園高等学校の記事で触れているように、東京都在住者は都の軽減助成金とあわせて授業料の助成を受けられる仕組みがあります。住んでいる都道府県の私学助成の制度は、学校選びと別に必ず調べてください。学校側が案内してくれないこともあります。文部科学省のQ&Aでも、国の就学支援金に上乗せする都道府県独自の支援事業については、お住まいの都道府県(または学校所在地の都道府県)に問い合わせるよう案内されています。本校が別の県にある通信制高校では、どちらに聞けばよいか迷いやすいので、両方に問い合わせてしまうのが早いと感じます。
支払いの時期と方法
入学金や施設設備費は入学手続き時に一括で必要になることが多く、まとまった金額が最初にかかります。授業料は年払い・半期払い・月払いなど学校によって異なります。教育ローンや分割払いの案内を用意している学校もありますが、その場合は利息を含めた総額で判断してください。
就学支援金の扱い方も学校によって違います。最初から差し引いた金額を請求する学校がある一方で、先に授業料を全額徴収し、対象者には後から差額を還付する方法をとっている学校もあります。還付の時期は学校に確認してください。学費の比較で一番見落としやすいのは、総額よりもこの「いつ、いくら手元から出ていくか」だと感じます。入学直後にまとまった金額を一時的に用意できるかどうかは、家計によっては学校選びを左右します。
支援金を受けるには、受給資格を得るための申請が必要です。支給は原則として申し込みが行われた月からの開始になるため、提出が遅れると、その前の月の分は受け取れないことになります。手続きの方法や提出書類、提出先、提出期日は学校や都道府県によって異なるので、入学手続きの書類と一緒に確認してください。
よくある質問
就学支援金に所得制限はありますか
令和8年(2026年)4月から所得制限は撤廃されています。2025年度以前の資料に出てくる年収590万円、910万円といった目安は、改正前の制度を前提にしたものです。ただし、令和8年3月31日以前から在籍している在校生は、経過措置により所得に応じて旧制度と同等の水準の支援を受けることになります。在校生の場合は、学校に自分の区分を確認してください。
私立の通信制高校はいくら支給されますか
最大で月額28,100円です。ただし単位制ごとに授業料が設定される課程では支給額の計算が異なるため、在学予定の学校に確認してください。
支援金は現金でもらえますか
家庭に振り込まれるものではありません。学校が代わりに受け取り、授業料と相殺する仕組みです。学校によっては先に差し引いた金額を請求する形(先引き)をとっています。
入学金や教材費も支援の対象になりますか
就学支援金は授業料に充てるためのものです。入学金・施設費・教材費・スクーリングの交通費などは対象外なので、実際の負担額を計算するときは分けて考えてください。
申請はどうすればよいですか
日本国籍の場合はオンラインで申請できます。提出期日が決まっているため、入学手続きの案内に従って早めに手続きしてください。支給は原則として申し込みが行われた月からの開始です。手続きの方法や提出書類、提出先、提出期日は学校や都道府県によって異なります。
支援金は何か月まで受け取れますか。休学したらどうなりますか
定時制・通信制の課程は原則48月まで支給されます(全日制の標準は36月)。休学中に授業料が徴収されない場合は、学校に支給停止の申出を出すと支給を止められます。申出をしないと休学中も支給額0円として期間が数えられ、復学後の残りの支給期間は休学した期間を差し引いたものになります。
申請が遅れたらどうなりますか
支給は原則として申し込みが行われた月からの開始になるため、申請が遅れると、それより前の月の分は支給されないことになります。提出期日は学校や都道府県によって異なるので、入学手続きの案内で早めに確認してください。
サポート校の費用も支援の対象ですか
対象外です。就学支援金は通信制高校の授業料に対するもので、サポート校の費用には適用されません。併用する場合は2階建ての費用として計算してください。
3年間の総額はどのくらいが目安ですか
学校とコースによって大きく異なります。当サイトで確認した範囲では、3年間の合計を公開している学校で199,000円〜290,000円でしたが、年額しか公開していない学校や、サポート校の費用が別にかかる学校もあります。通学頻度が高いコースや専門分野の授業があるコースほど高くなりやすいため、3年間の総額は志望校に直接確認しておくと確実です。
学校の募集要項に書かれた「支援金適用後の学費」はそのまま信じてよいですか
その募集要項が何年度の制度を前提にしているかを確認してください。2026年度の改正前に作られた資料では、旧制度の所得区分をもとに計算されている場合があります。最新の金額は学校に直接確認するのが確実です。
まとめ
通信制高校の学費は、入学時・毎年・スクーリング・サポート校の4つに分けて書き出せば比較できる形になります。授業料は単位数で決まるため、単価だけでなく年間の履修単位数を掛けて計算してください。
2026年4月から就学支援金の所得制限が撤廃され、私立高校(全日制)で月額38,100円、私立の通信制で最大月額28,100円が上限になりました。ただし単位制の課程は計算が異なり、入学金や教材費は対象外です。改正前の資料に出てくる年収の目安は、これから入学する人には当てはまりませんが、令和8年3月31日以前からの在校生には経過措置で旧制度と同等の支援が続く場合があります。資料を見るときは年度を確認してください。支給は申請した月からが原則で、通信制は原則48月まで支給されます。確認する順番に迷ったら、在籍の時期、単位制の計算、授業料以外の費用、支払いと還付の時期の順に見ていくと整理しやすいと思います。
「安いと聞いたのに高かった」という声の中身は「通信制高校はやめとけ」と言われる5つの理由を公式情報で検証で検証しています。学校別の金額は通信制高校の学費を都道府県別に比較、卒業までの単位の取り方は通信制高校で卒業できない人がいるのはなぜか、進路全体の整理は不登校の子が高校に進むときの選択肢をご覧ください。公立を選んだ場合に学費がどこまで下がるか、そのかわり何が制約になるかは公立と私立の通信制高校はどっちがいいかで比べています。
出典:文部科学省「高等学校等就学支援金制度に関するQ&A」(令和8年度の内容。確認日2026年10月27日)/各校の公式サイト・募集要項(確認日2026年9月9日)。